笑顔溢れる「ボールパーク」で再び日本一の東北へ 楽天が目指す愛されるチーム

コロナ禍で求められる新しい観戦スタイル

 2019年に2軍を初のイースタン・リーグ王者に導いた三木肇2軍監督が1軍監督に昇格、さらにロッテから鈴木が加入するなど、満を持して迎えた2020シーズン。本来であれば東京オリンピックの影響で例年よりも早い開幕が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅に延期されると、楽天はいち早くチーム活動を休止し、安全を最優先。

 緊急事態宣言が発令されるなど、これまで通りの生活を送ることはままならず、先が見えない状況が続いたが、そのような状況でも楽天はファンにさまざまなコンテンツを提供し続けた。「おうちでイーグルス supported by inゼリー」もそのうちの一つだ。

「おうちでイーグルス supported by inゼリー」のサイト内では、球団の通訳の方々による英会話レッスンの動画や、アカデミーコーチや専属トレーニングスタッフによるお家でできる簡単な運動の動画を公開。さらにお子様向けにクラッチくんなど球団マスコットのぬりえや、野球用語や楽天の選手名を用いてひらがなやアルファベットを学習できる表を提供するなど、試合が行われなくても、楽天を身近に感じてもらえるようなコンテンツを提供し続けた。

 そしてついに迎えた6月19日の開幕戦。無観客という物寂しい雰囲気ではあったが、普段は歓声や応援でかき消されてしまう打球音や選手の声などがクリアに聞こえ、新しい野球観戦の楽しみ方を発見できる良い機会になったとも言えよう。新規感染者数が少し落ち着くと、7月10日からは収容人数に制限を設けての観客動員を開始。しかし飛沫感染防止の観点から歓声をあげることはできず、ソーシャルディスタンスとして左右2席を空けた配席とされたため、従来の雰囲気とはほど遠いものとなった。

 開幕が遅れたことなどから、同一カード6連戦が行われるなど、イレギュラーな試合日程が組まれた2020年シーズン。7勝3敗で6月を終えるなど、序盤は好調の滑り出しで上位をキープするも、夏場以降は徐々に調子は下落。最終的に55勝57敗8分の4位でシーズンを終えた。

 しかし、今季からチームに加わった涌井が11勝を挙げて最多勝に輝くと、打線をけん引した浅村が32本塁打で本塁打王に輝くなど、個々の活躍が光った。また、ドラフト1位ルーキー・小深田もリードオフマンとして躍動するなど、チーム打率は.258でリーグトップの数字をマーク。しかし、チーム防御率は4.19でリーグ5位に沈んでいるため、来季以降再び上位に浮上するためには、投手陣の強化が必要となるだろう。

「寄せ集め」と揶揄されたチームは、15年の月日を経て地域から愛されるチームに成長を遂げ、開幕に間に合うかどうか不安視されていた県営宮城球場は、日本球界を代表するような笑顔溢れる「ボールパーク」へと変貌を遂げた。新型コロナウイルスの影響で、再びスタンドが埋め尽くされる日はまだまだ先になりそうではあるが、目指すところは変わらない。来季は新たに石井一久GMを監督に据え、東北をさらに熱くするべく戦い続け、新たな歴史を刻んでいく。

(「パ・リーグ インサイト」後藤万結子)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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