長嶋茂雄監督から怒号「篠塚! 打たせろよ!」 コーチ時代に味わった重圧と充実
ミスターからお叱りを受け、内心は「俺が打ってしまえば打てるのに…」と思うことも
「選手を教える、育てていくという楽しみはありましたよね。ただ、思ったように育たないなっていう部分もありました。やっぱりコーチとしては、何か足らなかったんだろう、最初は思ったりもしました。それから、この選手には、どういうことを言ったらいいのかとか、どういうものをやらせたらいいのかとコーチなりの引き出しを増やしていこうと思いました」
1997年からは打撃コーチに就任した。2年間務めた内野守備走塁コーチとはプレッシャーの感じ方が多少、違ったと言う。
「バッティングコーチをやってるときの方が大変でした(苦笑)。チームが打てないと長嶋監督にベンチの中でもよく言われましたよ。『篠塚! 打たせろよ!」と。内心では『俺が打つわけじゃないのに……俺が打ってしまえば打てるんですけど……』って思ったり。打撃は浮き沈みもある。打てないと自分の責任です。すごい役目だなっていうのは改めて感じました」
相手投手に手も足も出ない時、後一本が出ずに負けてしまった時、打撃部門のコーチやスコアラーはミスターの怒りに触れた。それでも、若い選手に一本、ヒットが出れば嬉しかった。
「大変な職業ですけど、楽しみの方が多い職場だと思います。1人で十何人も選手を見るわけで……。レギュラークラスはワンポイントぐらいで済むけれど、控えや若い選手にはそうはいかない。代打に行ったときに、この選手の力を十分に出せるかどうかっていうのを考える。自分なんかは、打撃はシンプルに考えていたので、その単純さでモノを言っても大丈夫なのかなと思ったりもしましたが、どんどんとデータもいろいろあるので、それを重視して、選手を迷わせないようにしていました」
内野守備、そして打撃コーチでも長嶋政権を支えた篠塚氏。勝負にかける熱はミスターから感じていた。救われたこともあった。
次回はベースコーチャーを務めていた時に「助けられた」ことをお届けする。
(Full-Count編集部)