“ノーマーク”の高校生が2000安打 日ハム・田中幸雄を発掘したのは運転手?

今でも田中氏は大社氏の優しい眼差しを思い出す

 初代オーナーの大社氏は、個人的なネットワークで発掘した田中氏を秘蔵っ子としてかわいがったと伝えられている。田中氏は「キャンプを視察に来られた時に、オーナーの部屋に呼ばれて、声をかけていただきました。いつも第一声は『じいちゃん、元気か? 父ちゃん、母ちゃんは元気か?』でした」と懐かしそうに振り返る。

 日本一野球を愛したオーナーとして、2009年に野球殿堂入りも果たした大社氏は、東京ドームによく足を運んでいた。「ちょうど一塁ベンチの横の席で見ていらっしゃって。あいさつに行くと必ず激励の声をかけてくださいました。とにかく勝ってほしい、応援しているという思いが伝わってきました。かといって、ロッカーに来られた記憶はないですし、負けたことについて何か言われたこともなかったです」と田中氏は大社氏の優しい眼差しを思い出す。

 オーナーがひんぱんに観戦に訪れるだけでも選手にとって励みになるだろうが、当時はさらにオーナー賞まで出してくれていたという。「オーナーが来られる試合で活躍するとオーナー賞をもらえるので燃えましたよ」と発奮材料にしたのも良い思い出だ。

 田中氏の心残りは、北海道移転後の優勝を見せてあげられなかったこと。2006年に優勝した際、大社氏の写真を胸の前に掲げた当時の大社啓二オーナーを胴上げした。「あの時、先代オーナーがいらっしゃったらなとみんな感じていました。野球が大好きで、自分のチームを愛した方でしたから」としみじみと語った。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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