「たくさん選んで下さい」 楽天石井監督が侍J稲葉監督に“大量招集”を求める理由
田中将、浅村、涌井、岸、松井、則本昂、牧田…侍J経験者がずらり
今夏に予定されている東京五輪で悲願の金メダル獲得を目指す侍ジャパンの稲葉篤紀監督が3日、沖縄県金武町の楽天キャンプを視察。同球団の石井一久GM兼監督と約20分間に渡って、球場三塁側ベンチ前で歓談する一幕があった。
今季の楽天には日本代表候補がめじろ押しだ。8年ぶりの日本球界復帰が発表されたばかりの田中将大投手をはじめ、涌井秀章投手、岸孝之投手、松井裕樹投手、則本昂大投手、牧田和久投手、浅村栄斗内野手と侍ジャパン経験者がズラリ。他にも、国際大会で重宝されるユーティリティプレーヤーの鈴木大地内野手がいて、さらに稲葉監督はドラフト1位ルーキーの早川隆久投手(早大)にも、希少価値の高い左腕として興味を示した。
石井監督は「うちのチームの数多くの選手にジャパンのユニホームを着てほしいし、活躍してほしい。稲葉監督には『できるだけたくさん選んで下さいね』と話しました」と明かした。「(日本代表に)選ばれても選ばれなくても、東京五輪開催期間にはNPBの公式戦は行われないから、リスクはそんなにない。あるとすればケガくらい」と太っ腹なところを見せた。
だが、その「ケガのリスク」を恐れ、自軍の主力選手の日本代表入りにいい顔をしない監督は過去に何人もいた。実際、2008年北京五輪で日本の4番を張った新井貴浩氏が死闘の中で腰を疲労骨折し、当時所属していた阪神でしばらく戦列復帰できなかった例がある。金メダルを義務付けられる自国開催の五輪となれば、心身への重圧はなおさら増すだろう。
もちろん、石井監督もそれは承知の上。「国際大会で負けられない試合をすることは貴重な経験になる。それが財産になり、ポテンシャルも上がってくる」と、長い目で見れば選手個人にとってもチームにとってもプラス面が大きいと見ている。
また、石井監督と稲葉監督は現役時代、1995年から2001年まで7年間ヤクルトで同じ釜の飯を食った元同僚だ。1歳下の石井監督は「いっぱい援護してもらい助けてもらったけれど、いっぱいミスをされて足を引っ張られたから、おあいこかな」とおちゃらける一方、「うわべだけではないコミュニケーションがあり、協力できることもある。なんでも言ってください」と親密な関係をうかがわせた。
2018年から務めているGM職に加え、今季から現場の指揮も執る石井監督。その視線は目先の勝利以上に、各選手の野球人生全体に注がれているようだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)