マリナーズ期待の26歳に宿る3000安打の精髄… トニー・グウィンと重なるイチローの姿

フランスの印象に残るグウィンの言葉、打撃の精髄には触れず

「入部して初めての練習日でした。トニーはこう言ったんです。『私は監督のグウィンだ。もう選手じゃない。もうトニー・グウィンじゃない。君たちが次のレベルにいけるようここで指導をするコ―チだ』って。最初に、浮ついた僕らの目を斥け、共に純粋に野球に取り組もうという彼の意思表明は、18歳の僕に響いた」

 フランスの言葉を辿っていると、昨年12月、日本の高校生に指導を行ったイチロー氏とグウィン監督の姿が重なった。

 フランスのメジャー初ヒットは、トニー・グウィンが“5.5 hole”と呼ぶ、三遊間をゴロで抜くシングルだった。フランスは右打者だが、恩師の広角打法を象徴する場所への1本は「最も思い出深い宝物」と、サンディエゴの地元記者に語っている。

 コロナ禍で60試合制となった昨季途中に、パドレスからトレードでマリナーズに移籍。23試合に出場し、打率.302、2本塁打、13打点を記録。5本の二塁打と1本の三塁打で長打率.453を残した。

 今季、不動の指名打者を目指すタイ・フランスはどんな打撃を見せるのか。

 画家が紙という枠組みで表現をするように、打者は白線で仕切られた打席で技術を表現する。2.16平方メートルのその空間でフランスが出す1本には、“グウィン監督”と磨いた鋭敏な感覚が宿っている、と言えば穿ち過ぎだろうか。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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