田口・廣岡の電撃トレード、その本質とは? データ分析の視点から見る両球団の思惑

田口の評価で両球団間にギャップ? トレンド変化を象徴するトレードか

 一方の巨人はどうだろうか。巨人は2年連続でリーグ王者となっているだけあって、ヤクルトに比べると現状の弱点は少ない。昨季は一塁手や両翼が弱点となったが、オフに梶谷隆幸や新外国人選手の補強を行い、対応済みだ。廣岡が守ることのできる二塁、三塁、遊撃手には、それぞれ吉川尚輝、岡本和真、坂本勇人と盤石のレギュラー選手がいる。廣岡がすぐさま付け入る隙は小さい。

 ただ、現状では盤石の内野、二遊間も、坂本の次の世代となると不安が残る。吉川が遊撃手として坂本の後継者として有力な候補だが、吉川がコンバートとなると今度は二塁のポジションが不在となる。当然廣岡のような右の長距離打者は不在だ。この将来の二遊間のポジションへの投資として廣岡を獲得したのだろう。

 しかし、廣岡の獲得に田口というコストを支払うことは適切だったのだろうか。田口は2016、2017年と2年連続で160イニング以上を消化。菅野智之、マイルズ・マイコラスに次ぐローテーション上位投手として活躍を見せた。総合指標WARで見ても3.2、3.7とリーグ平均レベルの先発投手の水準である「2.0」を大きく上回る貢献を見せていた。

田口麗斗の年度別成績
2015 13登板 66.1回 WAR1.4
2016 26登板 162回 WAR3.2
2017 26登板 170.2回 WAR3.7
2018 16登板 86.1回 WAR0.9
2019 55登板 65.1回 WAR1.6
2020 26登板 89.1回 WAR1.4

 しかし、ここ数年は救援に回ることも多くなり、WARも1.0前後にとどまっている。昨季も先発としてスタートするも、シーズン途中から救援に。1軍の戦力であることは間違いないが、以前ほど絶対的な力は示せずにいる。巨人としては、今後、田口を先発として起用することが難しいと判断したのだろうか。他方、もしかするとヤクルトはそうは見ておらず、先発として十分に通用する力があると考えているのかもしれない。この部分で2球団間の評価にギャップがある可能性はありそうだ。

年俸差が注目されたが、このトレードの本質は選手の貢献をどのタイミングで見込むか

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