田口・廣岡の電撃トレード、その本質とは? データ分析の視点から見る両球団の思惑

年俸差が注目されたが、このトレードの本質は選手の貢献をどのタイミングで見込むか

 総合的に見ると、早い段階から着実な貢献が見込める選手と、中長期的に大きな貢献をもたらす可能性がある選手のトレードというふうに解釈できる。この一件については年俸格差に注目されるが、本質は「選手の貢献をどのタイミングで見込むか」という点にある。

 ただ、23歳の廣岡に対し、田口もまだ25歳。中長期的に見ても田口の方が長く大きな貢献を示す可能性も十分ありえる。このトレードの評価については目先の1年だけで結論づけられるものではないだろう。

 近年の日本球界でのトレードは、控えレベルの選手同士で行われるケースが多かった。ただこのトレードは明らかにそうした性質のものではない。実績十分で現在も力を持った投手と、12球団屈指の素質を備える有望な内野手の、かなり踏み込んだトレードだ。日本球界におけるトレードに対する認識に変化が生まれてきていることを象徴する一例といえるかもしれない。

(※1)WAR(Wins Above Replacement)
野手であれば打撃・走塁・守備、投手であれば投球の貢献を総合し、勝利への貢献度を測る総合指標。基準となる「0」は代替可能、およそ一軍半レベルの選手に設定されており、その選手が同じだけ出場する場合に比べ、どれだけチームの勝利を増やしたかを表す。勝利数は増やした得点・減らした失点数から換算して求められる。

(DELTA)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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