菊池雄星がOP戦で示した“勇気”とは? メジャー3年目に賭ける気概

昨季は150キロ台のカッター多投…制球安定せずオフにフォーム修正

 球威を重視するフォームに改造した昨季は、150キロ台のカッターを多投した。しかし、制球は安定せずオフからフォームを修正。しなやかな腕の振りから投げるスライダーの質の向上が大きなテーマの一つになった。その球を腕が縮こまらずに投げられるか――。真の精度は“修羅場”が尺度。逃げては自信も得られない。

 オープン戦で初めてバッテリーを組んだのは、若手のトレンス。どの球種でもほぼ変わらない高さにミットを構える偏りは、曲がり球を投げるには微妙なストレスになってくる。投手にとって低めへの残像は変化球の切れを生む導きにもなるからだ。菊池は気にならないのだろうか。穏やかな性格ゆえ、自分の中で収めてしまうのだろうか……。3者凡退で上々な滑り出しも、その心中は穏やかではなかったはず。その後にピンチをくぐり抜けると、菊池はダグアウトでトレンスと言葉を交わした。その内容を問われると、ためらいがちに言った。

「あ、えーと、えーと。追い込んでからの構える位置について、ちょっと僕の希望を伝えたという感じです」

“僕の希望”とは、メジャー3年目に賭ける気概そのものをオブラートに包みこんだものではなかったか。繊細な投手心理は確かに伝わった。トレンスが片膝を地面に着けてミットを構えるようになった3回、スライダーを巧みに織り交ぜて、先頭から2者連続の空振り三振を奪い、5者連続封じとした。菊池はその回を「本当にいいボールが投げられたと思いますし。まだまだ上がる気はしてますから」と振り返っている。もし、捕手との意思疎通が欠けたままでいたなら、胸奥は違っていたであろう。

 登板間の調整で昨年まで行っていた平地でのキャッチボールをやめ、今は実戦と同じ角度を意識してブルペンでの肩慣らしに変えている。

 オープン戦も残り2週間。菊池雄星は本番モードに入っている。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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