2年で戦力外も「良かった」 青年実業家となった「松坂世代」野手の“華麗な転身”

アパレル業界で活躍する湊川誠隆氏【写真:小西亮】
アパレル業界で活躍する湊川誠隆氏【写真:小西亮】

独学でデザインの知識を身につけ、自らの足で取引先を開拓する日々

 目をつけたのは、アパレル。もともとファンションやデザインには興味があった。「好きなことだったら、たとえ辛くても続けられるかなと」。投げ出さない執念は、野球で学んできた。知り合いから請け負った野球関係のグッズのデザインや制作から始まった第2の人生。立ち上げた会社「マッシモンテ」には、イタリア語で“最大”を表す「massimo」と“山”の意味の「monte」を掛け合わして思いを込めた。

 独学でデザインの知識をたたき込み、自らの足で縫製工場を訪ねて開拓していく日々。「やっぱり自分から行動を起こさないと、相手には伝わらないですから」。決して大袈裟でなく、寝る間も惜しんで働いた。徐々に仕事の幅は広がり、6年がたったころ、念願の店舗「NEXT THING」をオープンさせた。

 米ニューヨークで買い付けた服を販売しながらも「人が作った物ばかりを売っていても面白くない」と店名を同じ独自ブランドも展開。6年間で培ったデザインの力や取引先とのつながりが大いに生きた。今では、交友のあるプロ野球選手らがよく着用してくれている。昨年の新型コロナウイルス感染拡大時には、いち早くマスクの制作にも着手した。

 アパレルが主軸としてある一方、地元テレビ局の野球解説者や中日のジュニアチームの監督も務める。2019年12月にはYouTubeチャンネルを立ち上げ、今春からコーヒー店も開くなど多方面で精力的に動く。気がつけば、NPBの舞台に別れを告げてから17年。あの時から変わらない思いがある。

「2年で戦力外になったことが、良かったなと思える自分でいたいんです」

 好きな言葉は「I’m on the right track」。いま、正しい道を進んでいると信じ、ビジネスという“山”を地道に登り続けていく。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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