戦力外の2日後に「日雇い派遣」 年下から指図され実感した“プロ野球選手の終わり”

みっちり働いて1万円にも満たない日給「稼ぐのがどれだけ大変か」

 思うように活躍できなくても、一般会社員の平均より高かった年俸。練習着やユニホームは勝手にクリーニングされて戻ってくる。グッズの売り上げやメディア出演などによって、細かな収入もあった。いつまでもそんな感覚でいれば、常識外れのレッテルを貼られて社会からはじかれる。だからこそ、現実を直視した。

 登録から1週間後、とある工場の荷物整理に向かった。一緒に働くのは、名前も知らない初対面の人たちばかり。年齢が一回り以上も離れた中年男性もいた。現場でリーダー的な役割を担う年下男性から「石川くん! これやって」と指示される。年功序列を順守してきた野球界では考えられなかったが、「わかりました」と頭を下げて応じるほかなかった。

 みっちり働いて、日給は1万円にも満たない。「1万円を稼ぐのがどれだけ大変か。本当にいい勉強になりました」。物見遊山ではない、切実な実感がこみ上げる。30歳にして初めてのアルバイト。「本当に、いい勉強になりました」と糧にする。

 新たな一歩への心構えを施し、この春から柔道整復師の資格を取得するため専門学校に通う。故障が多かった自らのプロ人生を教訓にしたい。さらに2月には、学生野球の指導者になるために必要な資格を回復。学生の傍ら、週末は指導者として精を出すつもりだ。「野球しかやってこなかったので、まずは今までの経験を生かせることをやっていければと思います」。その晴々とした表情こそ、プロ野球選手の終わりの証明だった。

(小西亮 / Ryo Konishi)

朝日新聞スポーツシンポジウム

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