聖地・神宮に憧れた元アメフト部 東大3年生ルーキーが迎えた決意の春

東大は6点ビハインドから追い上げるも1点及ばず早大に敗戦

“本当の春”を最も楽しみにしていたのは、東大の阿久津怜生外野手(宇都宮)かもしれない。「去年はお客さんとしてスタンドでみていた」という3年生ルーキーは、昨夏までアメリカンフットボール部の選手だった。高校時代は硬式野球部に所属。アメフト選手として観戦した神宮球場での試合に感化され、野球部へ転部した。フレッシュトーナメントで既に神宮デビューは果たしていたものの、リーグ戦は初出場。早大との開幕戦で、「1番・右翼」に名を連ねた。

 試合は早大が初回に4番・岩本久重捕手(4年)の適時打で先制すると、4回に7番・熊田任洋内野手(2年)の2ランなどで3点、5回には3番・蛭間拓哉外野手(3年)のソロで追加点。東大は6点を追いかける展開となったが、7回に4番・井上慶秀内野手(4年)の適時打などで3点を返すと、8回にも2点を挙げて1点差まで詰め寄った。

 ブラスバンドのボリュームも一気に大きくなる。試合の雰囲気に合わせて応援の音やテンポが変化するのは生演奏の醍醐味だ。選手の熱いプレーと応援団がさらに高めた雰囲気の中、東大の応援歌「ただ一つ」にあわせ三塁側のスタンド席も一つになった。阿久津に快音は聞かれず、結局そのまま5-6で東大は敗れたが、「すごい応援の中で野球ができて幸せだなと思った」と少し恥ずかしそうに振り返った。

 2年ぶりにやってきた“本当の春”。選手、応援団、ファン、みんながとてもワクワクした表情で初日を終えた。大学野球の聖地・神宮での、熱い2か月が始まった。

(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。

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