阪神藤浪は「酷い時期に比べれば雲泥の差」 OB捕手が着目する“過去からの変化”

昨年の経験が「考え直すきっかけになったのではないか」

 昨季は新型コロナウイルスに感染して出遅れ、7月に1軍昇格したものの先発として結果が出ず、9月14日に2軍落ちした。しかし、1軍で集団感染が起きたことを受けて同26日に緊急昇格。以降は中継ぎに役割を変えて好投した。野口氏は「個人的には、本格的にリリーフに転向した方がいいのではないかと思ったほどハマっていた。この経験のお陰で、リリーフが毎日どんな準備をして、どんな気持ちでマウンドに上がっているかを学び、自分が先発するなら、最低限どんな覚悟で臨まなければならないか、考え直す機会になったのではないか」と推察する。

 ルーキーイヤーの2013年から3年連続2桁勝利を挙げた藤浪だが、16年から下降線をたどり、2019年は1軍登板がわずか1試合で0勝。昨年も1勝6敗に終わった。復活の兆しが見える今季は、何勝できるのだろうか。

 野口氏は「現時点で勝利数を予想するのは難しい。開幕投手を務めた藤浪は今後も相手のエースと対戦するケースが多くなる。広島の大瀬良が故障で戦線離脱したりもしているが、巨人の菅野との対決は藤浪個人にとっても、チームにとってもポイントになるのではないか」と見る。

 一方、この日は打撃でも5回に通算3号となる今季1号2ランを放ち、チームの全得点をたたきだした。フルカウントから石川の直球を振り抜いて左中間席へ運んだ豪快な打撃もまた、魅力いっぱいだ。

「阪神の先発投手陣は秋山(拓巳)も打撃がいい。相手バッテリーにとっては、本来自動的にアウトを計算する投手も警戒しなければならないとなると、大きな負担になる。打撃のいい投手はたいがいバントもうまいので、貴重な戦力です」と野口氏うなずく。まだまだ危うい雰囲気も残してはいるが、チームを16年ぶり優勝に導けるか、藤浪の今後の投球に注目したい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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