新庄剛志氏、17年越しの恩返し…思い出の長野で“ノーギャラ始球式”実現の舞台裏

始球式に登場した新庄剛志氏【写真:荒川祐史】
始球式に登場した新庄剛志氏【写真:荒川祐史】

「伝説のホームスチール」決めた思い出の地に感慨「一生忘れられない」

 思い出すのは、2004年のオールスターゲーム第2戦。走者として三塁にいた新庄氏は、球宴史上初の単独本盗を決めた。ファンの記憶に刻まれた“伝説のホームスチール”が生まれた地に再び立ち「この球場にはたくさんの思い出がある。記憶が蘇ったというか、その記憶は一生忘れられない」と噛み締めた。

 スタンドのファンに姿を見せたのは30分にも満たなかったが、やはり「新庄劇場」は健在だった。始球式の際に使用した金色のグラブは、自身が1993年に初めて受賞したゴールデングラブ賞の“実物”。この日の試合で勝利したチームに贈呈すると宣言した。「僕は10個持っているので、1個くらいは」と粋な演出。「プロを目指す子たちが、ゴールデングラブ賞を獲りたいと思ってもらえれば」と思いを寄せた。

 2019年11月に現役復帰を突如宣言し、昨年12月の「プロ野球12球団合同トライアウト」を受験。NPB球団からオファーはなく断念する結果となったが、今でもメディアに露出すると注目を集める。そんな派手な姿も紛れもない新庄剛志だが、三澤氏は“もうひとりの新庄剛志”を知っている。

「みんなが見ているとやらないんだけど、見えない部分で地道に努力をしたり、他人のために何かをやってあげたり。律儀で、本当にナイスガイ。熱いものを持っている男ですよ」

 今回の始球式も「気持ちでいくんだから」と、ノーギャラで引き受けた。日本球界復帰の舞台を作ってくれた恩人へ、17年たっても忘れない感謝。情に溢れる姿こそ、「新庄劇場」が放つ真の魅力なのかもしれない。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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