「ゆっくり走りました」から5年 大谷翔平の激走3得点から見えたリアル二刀流の成熟
2016年に先頭打者弾「疲れないようにゆっくり走った」→2021年はバント安打に激走3得点
■エンゼルス 9ー4 レンジャーズ(日本時間27日・テキサス)
エンゼルスの大谷翔平投手は26日(日本時間27日)、敵地のレンジャーズ戦で「2番・投手」で先発した。指名打者制を解除した投打同時出場は22日ぶりメジャー2度目。初回に4失点したものの、5回9奪三振3安打4失点に抑えて3年ぶり勝利を挙げた。打撃では2回に右翼線2点二塁打を放つと、6回のバント安打で今季7度目のマルチ安打。3打数2安打2打点3得点と投打で躍動した。試合後の会見では、リアル二刀流の進化を感じさせる一幕があった。【小谷真弥】
3点を追う2回2死一、二塁。大谷は右翼線2点二塁打を放ち、反撃の口火を切った。驚きだったのはその後。マドン監督は試合後の会見で大谷へ「三盗禁止」のサインを送っていたと明かした。快足の大谷なら三盗できるだけの能力は当然あるが、この日は投打同時出場試合だ。知将のサイン通り三盗は実現しなかったが、先発投手に三盗禁止サインが出ること自体、ビックリだった。報道陣から「二塁打後に三盗を狙ったが、マドン監督が止めたと言っていた。どんなやり取りがあったか」と問われた大谷は、「内緒です」と笑みを浮かべるだけだった。
2016年7月3日のソフトバンク戦(当時ヤフオクドーム)。大谷は「1番・投手」の仰天オーダーで登場し、初回に人生初の先頭打者アーチ。投げては8回無失点の熱投を見せて伝説となった。ただ、大谷は当時、こう振り返っていた。「なるべく疲れないように、ゆっくり走りました」。
それがどうだ。初回1死から四球で出塁し、ウォルシュの右前打で二塁から先制のホームへ滑り込んだ。マウンドに上がる前にも関わらず左膝付近に赤土が付いていた。2回にもトラウトの左前打で二塁から生還し、6回先頭には足を生かして三塁前へバント安打。ウォルシュの中越え二塁打で、またも二塁から生還した。ア・リーグ投手の2安打3得点は通算215勝を挙げた右腕ジム・ペリーがツインズ時代の1971年5月1日に記録して以来、実に50年ぶりの記録だという。
投げて打つだけではない。「一生懸命走ること」。少年時代に父・徹さんとの「野球ノート」を通じて叩き込まれた全力疾走を投打同時出場試合でも貫いた。大谷はNPB時代から「体作りにゴールはない。継続してやることが大事」と言っていたが、ようやく目指すべきプレーが超ハードワークの一戦でも出来てきたということか。
100年前のベーブ・ルースは「3番・投手」で出場し、投げては5回5安打4失点。打っては3打数2安打2本塁打3打点2得点だった。この日の大谷は5回3安打4失点、打っては3打数2安打2打点3得点。「5回4失点」「3打数2安打」は100年前のルースと同じという活躍を見せた。
「嬉しいは嬉しいですね。やっぱり。そういう選手を引き合いに出してもらえるのはすごい嬉しいことだと思います。まだ開幕してそんなに立っていない。必ず好不調あると思うので、なるべく維持できるように。もっと良くなるように練習していきたいなと思います」
野球人・大谷の真価が見えるメジャー2度目のリアル二刀流だった。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)