送球が顎を直撃する“珍事”にめげず粘投 西武今井の危うい魅力と潜在能力

「細ダルビッシュ」の異名、潜在能力は折り紙付き

 その後は最速154キロの速球を軸に圧倒。2回には振り逃げで出塁させた高部を、一塁牽制球で刺す技も見せた。5回には先頭の高部を四球で歩かせたが、続く藤岡にカットボールを打たせて遊ゴロ併殺に仕留めた。「今日は真っすぐというよりもカットボールが良かったです。結果、引っかけさせて内野ゴロに打ち取れる場面があったので良かったです。次回以降にも有効に使っていければと思います」と手応えありげだ。

 1-1の同点で迎えた6回、先頭のマーティンに9号ソロを浴びるも中村奨、安田、角中を3者連続三振に切って取る余力があった。味方の愛斗が同点4号ソロを放った直後の7回にも、2死二塁のピンチを迎え、西口投手コーチがマウンドへ駆け寄るシーンがあったが、「お前に任せた」と続投指示。代打・井上を遊ゴロに打ち取って信頼に応え、今季最多の122球でマウンドを降りた。

 昨季はオープン戦で快投を続け、先発の柱として期待されたが、ふたを開けてみれば、19試合3勝4敗、防御率6.13に終わった。パドレスのダルビッシュ有投手を一回りスリムにしたような体形で、「細ダルビッシュ」とも呼ばれる。

 異名にふさわしい潜在能力の持ち主だが、制球難が大成を妨げてきた。歯車がかみ合えば、リーグを代表する投手に化けてもおかしくない。まさかの珍事が本格的なブレークのきっかけになるなら、もう誰も文句は言わない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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