コロナ禍で“完全実力主義”やめた 坂本勇人ら育てた名将が練習量を減らした訳

「強面の僕にも意見を言える」感じた生徒の成長

 全員野球で勝つ方針に転換し、練習面でも改革を施した。1週間のうち、月曜日は休養日、木曜日は生徒主体で各自の課題に取り組む自主練習に設定。「週2日、生徒に考えさせる時間にしようと。自分も今までは練習あるのみという考えだったんで、勇気出して決断しました」。休ませるのにも、覚悟が必要だった。

 チームは変わった。この日、コールド勝ち目前の7回にエース・飯田真渚斗投手(3年)を交代させ、孫大侑也投手(3年)に託した時だった。ベンチで選手たちが発した言葉に、成長を垣間見た。金沢監督は言う。

「球数制限もある中で、飯田を温存したかった。そしたら、永井(龍樹・3年)は『飯田で行きたい』、須貝(将希・3年)は『孫大でいこう』と(意見を言ってきた)。結果としては、須貝の方にしたんだけどね。今までは、意見を言うこともなかったし、聞くこともなかった。強面の私にもちゃんと言えるようになりましたね(笑)」

 コロナ禍は世界を大きく変えたが、指導者の考え方も大きく変えた。“心の補欠”がない真の全員野球こそ、新たな時代の旗印になるのかもしれない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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