スキー旅行にバイク免許「人生が楽しい」 引退の概念に囚われない五十嵐亮太氏の今

ヤクルトなどで活躍した五十嵐亮太氏【写真:荒川祐史】
ヤクルトなどで活躍した五十嵐亮太氏【写真:荒川祐史】

バイク免許取得に家事参加「新しい人生のスタートですね」

 そして最近、もう1つチェックリストから消えた項目がある。それがバイク免許の取得だ。まず普通二輪免許を取り、今は大型二輪免許の取得を目指し、教習所に通っている。通称“一本橋”と呼ばれる直線狭路コースでは、教習所の指導員になるために求められる最低ライン、13秒の壁を越えるセンスを発揮。「中型はギアの切り替えが楽しい」と目を輝かせる。

 先日は中型バイクをレンタルして、千葉方面までツーリングに出掛けたという。

「ディズニーランドの方まで行って、楽しかったですね。車よりバイクの方がスピードを感じるので、最初は高速に乗るのがちょっと怖かったけど。大型が取れたら遠くまで行きたいですね。まだバイクに慣れてないから、信号で車の前に止まってエンストしたらどうしようとか、いろんなドキドキを感じながら乗っている段階です。もちろん、安全第一で」

 新しいことと言えば、これだけ長い時間を家族と一緒に過ごすのも初めてだ。野球選手はシーズンが始まれば、日程の半分は遠征に出掛けて家を留守にする。現役時代は「家のことはほとんどやらなくて、妻がほぼ全部やってくれていた」が、今は「いい具合を確かめながら」家事にも参加する。

「野球をしている時は全然手伝わなかったし、妻も何か言ってくるわけではなかったので、逆にこれだけ家にいると家族がちょっと嫌じゃないかなって不安はありますよね。今は空いている時間でお互いストレスが溜まらないように、『これ以上やるとダメかな』『これやったら喧嘩になるかな』といい具合を確かめながら、役割分担を始めています。洗い物をしたり、ご飯も鍋だったら作れます。野菜を切るだけだから(笑)。あと、僕に対する娘や息子のツッコミがだんだん的確で厳しくなってきて。言ってることは、確かに当たっているんですよ。当たってるからこそイラッとしたりして(笑)。これも新しい人生のスタートって感じですね」

 ここまで今を楽しめているのには、理由がある。それは五十嵐氏が持つ「引退」に対する柔軟な考え方だ。

「引退したから、もう野球ができないってわけじゃないと思うんですよ。幸い、僕は引退試合でしっかりやらせてもらって、野球に対して気持ちよく引退することはできたけれど、でも、もし野球がまたやりたくなったら続けられる環境は意外とあるのかな、と。『なんだ五十嵐、引退したのにまたやるのかよ』って思われる可能性はあるけれど、実際、野球をやろうと思えばどんな形でも続けることはできる。引退=もう野球は一切やりません、となると、野球から離れたくない気持ちが生まれてくるんじゃないかって思うんです。僕は引退したし、気持ちよく辞めたけど、またやりたくなったらやればいいんじゃないかな、くらいのちょっと軽い気持ちはありますよね」

アメリカで経験した型にはまらない発想「僕の中にも柔軟性が生まれた」

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