低い援護率の中日柳、DeNA助っ人は選球眼UP セイバー指標で選ぶセ月間MVP

中日・柳裕也【写真:荒川祐史】
中日・柳裕也【写真:荒川祐史】

3-4月に続いて推挙された中日・柳は多くの指標でリーグ1位に

【投手部門】

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 各チームのRSAA上位3人は以下の通り。

阪神:スアレス4.50、秋山拓巳2.29、青柳晃洋2.22
巨人:ビエイラ2.69、戸根千明1.70、鍵谷陽平1.28
ヤクルト:奥川恭伸5.38、田口麗斗2.94、石山泰稚1.48
中日:柳裕也5.87、小笠原慎之介3.81、R.マルティネス3.53
広島:高橋昂也3.21、栗林良吏2.74、九里亜蓮1.45
DeNA:ピープルズ4.41、国吉佑樹2.49、砂田毅樹2.19

 公式の月間MVPでは勝利数や防御率が大きく寄与するため、有力候補は3勝をマークした小川泰弘、戸郷翔征、サンチェスだろうが、防御率では戸郷、サンチェスが4点台に対し、小川は2.77。さらに1完封を記録しているため小川が最有力と思われる。ただ、この3投手は上記のRSAA上位リストにはない。

 tRAによる投手評価で最もセ・リーグで高い数値を残したのが中日の柳裕也である。柳は2.05というリーグで最も恵まれていない援護率にもかかわらず月間2勝をあげている。内容を見るとかなり優秀であることがわかる。

○柳裕也(中日):tRA5.87
登板3、2勝0敗
防御率0.82、WHIP0.77、奪三振率10.64、QS率100%、被打率.194(すべてリーグ1位)

 各指標すべてリーグ1位の好成績を残している。今季の柳はストレートの平均球速が142キロと昨年より上昇。また報道によれば、今年の春季キャンプ時のラプソードによる計測で、回転数は2450回転とリーグ平均の2078回転を大きく超えていることが分かった。同じピッチトンネルを通してチェンジアップやカットボールで空振りが取れるピッチングとなっている。3-4月に引き続きセイバーメトリクス目線で選ぶ5月の月間MVPに柳を推挙する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。コミュニティサイト「鳥越規央のデータ野球部」を開設。
https://butaiura.fan/community/torigoenorio/

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