経験、変則、ユーティリティの精鋭24人 侍J稲葉監督が選手選考に込めた思い

阪神青柳に期待「シンカー系の球は初見では打ちにくい。先発、リリーフの両方で活躍を」

“変則枠”と呼びたくなるのが、代表初選出の阪神勢2人。青柳晃洋投手と岩崎優投手だ。横手投げの青柳は今季5勝2敗、リーグ2位の防御率2.17(16日現在)と好調。横手・下手投げは米国や中南米の打者に対して有効といわれ、過去にも2019年のプレミア12でソフトバンク・高橋礼投手、17年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と15年のプレミア12では当時西武の牧田和久投手(現楽天)が選出されている。稲葉監督は「豪快に振ってくる外国人の打者にとって、青柳投手のシンカー系の球は初見では打ちにくい。先発、リリーフの両方で活躍を期待している」と語った。

 岩崎についても、稲葉監督は「腕が少し遅れてくる独特の投げ方で、スピンの効いたボールは初見で対応するのは難しい。打者の右・左に関係なく1イニングを任せられる」と評した。

 稲葉監督は世界一に輝いた2019年のプレミア12で、当時チームでは代走か守備固めでの出場が多かったソフトバンク・周東佑京内野手をサプライズ選出。主に代走として起用し、大会最多の4盗塁で貴重な戦力として機能させた。左腕のソフトバンク・嘉弥真新也投手は、対左打者用ワンポイントとして役割を果たした。しかし、規定でプレミア12より出場選手が4人減る東京五輪では、こうした“スペシャリスト枠”を選出する余裕がない。

 その代わりに重要となるのが、1人で2役も3役もこなせる“ユーティリティ枠”の選手だ。外野手として選出されたソフトバンク・栗原陵矢は今季、右翼、左翼の他、三塁、一塁、さらには捕手でもプレーしている。そもそもソフトバンクでは今季も捕手登録である。選出された曾澤やソフトバンク・甲斐拓也捕手に不測の事態が起こった場合の“保険”としても貴重な存在だ。

 打線の軸として期待される楽天・浅村栄斗内野手も、チームでは二塁手もしくはDHだが、東京五輪では一塁手としての出場が主になる。稲葉監督は「プレミア12でもファーストを守っていただいたし、『少し練習をしておいてください』と伝えてある」と明かした。

 選手1人1人、期待される役割は異なる。経験豊富な選手や特殊技能を持つ選手たちが、怖いもの知らずの若手をフォローする形になれば、侍ジャパンは悲願の金メダルへぐっと近づく。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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