145キロが勝負所では160キロに 大谷翔平の“ギアチェンジ”に見えた4年目の成熟
初回145キロのフォーシームが5回ピンチで160キロに「絶対に抑えたい場面ではあった」
■ジャイアンツ 9ー3 エンゼルス(日本時間24日・アナハイム)
エンゼルスの大谷翔平投手は23日(日本時間24日)、本拠地のジャイアンツ戦で「2番・投手」で出場し、6回9奪三振6安打1失点の力投を見せた。今季4勝目と日米通算50勝はお預けとなったが、2試合連続、今季5度目のクオリティスタート(QS)を達成。決して本調子でない中で、今季8勝のガウスマンと白熱した投手戦を演じた。3年ぶりの100球を超える熱投からは投手としての成熟が見えた。
投手・大谷が底知れぬパワーを見せた。1点ビハインドの5回1死一、二塁。勝敗を左右しそうな大ピンチで一気にギアを上げた。剛速球で攻め、2ストライクからの5球目に最速99.2マイル(約159.6キロ)を記録。7球目の高め、98.7マイル(約158.8キロ)で空振り三振に仕留めた。続くクロフォードも直球、直球、スプリットで3球三振。試合の流れを渡さなかった。
「勝負どころの見極めも大事。あそこで勝つ確率を残すためには一番重要なところではあった。絶対に抑えたい場面ではあったのかなと思います」
驚異のギアチェンジだ。初回1死一塁、ポージーへの初球フォーシームは最遅90.0マイル(約144.8キロ)。立ち上がりはフォーシームが走らず、この日のフォーシームの球速差は最大9.2マイル(約14.8キロ)あった。「体が動きづらいと感じていましたけど、投げるうちに徐々に徐々に良くなった。そこも良かったなと思います」と振り返ったが、打席に立つジャイアンツ打者にとっては同じ投手に見えなかったはずだ。
右肘のトミー・ジョン手術からの復帰2年目。100マイル(約161キロ)を超える剛速球と魔球スプリットは2018年から健在だが、今季は投球の巧みさが増している。今季から「真っすぐ狙いの時に1球で終われば、こちらも楽」というカットボールを導入。この日は20球を投じ、カウント球として威力を発揮した。「トータルで試合を作る中で全部が全部、全力で投げればいいってわけでないです」。打者を力でねじ伏せるパワーピッチングだけではない。長いシーズンを完走するためにも大事な意識となるはずだ。
投げる球は超一級品。それに加えてピンチや勝負どころで全力投球する、そんな投球術が加わっているように見える。「相手がどういう風に考えているのかな、とよく考えるので。そこは投手やってても打者やってても変わらないです。必ずしも状態が良い時ばかり投げられるわけではない。特に調子が悪い時っていうのは、投げているボール以外の要素のところで打ち取っていく部分が大きいかなと思います」。投手・大谷の成熟を感じさせる今季最多105球の力投だった。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)