プロ注目の“岐阜の二刀流” 最後の夏にかける思いと憧れる大谷翔平との「縁」

岐阜第一・阪口樂(左から2番目)【写真:間淳】
岐阜第一・阪口樂(左から2番目)【写真:間淳】

2011年夏の甲子園、大谷が出場した試合をスタンドから観戦した

 阪口は高校野球では珍しくない、主砲でエースの二刀流だ。投手では最速143キロ。本人の評価は「自分くらいのレベルはたくさんいる」と辛口だが、田所監督は「大きく崩れることがなくなって、安心して見ていられるようになった」と成長に目を細める。

 直球でも変化球でもストライクを取れるようになり、与四球が減って奪三振は増えた。力のある直球と組み合わせる変化球の1つがナックルカーブ。縦に大きく割れ、打者の目線をずらす効果がある。負荷がかかって割れやすい爪をマニキュアで手入れしながら、最後の夏に備えている。

 目標は甲子園出場。その場所には鮮明な記憶がある。小学生だった2011年の夏、阪口は父と弟と初めて甲子園に行った。偶然見たのが、大谷翔平擁する花巻東と帝京の一戦だった。試合は互いに点を取られたら取り返す大接戦。当時2年生の大谷は3番に座って適時打を放ち、投手では2番手で自責点1と好投したが、7-8で帝京に敗れた。

 阪口は白熱する試合展開に興奮し、広い球場と大歓声に胸を躍らせた。そして、「ここでプレーしてみたい」と憧れを抱いた。その1年2か月後。プロ野球ドラフト会議で日本ハムから大谷が1位指名を受けると「あの時の選手だ」と、聖地で見た姿が重なった。

 大谷がメジャーで歴史に名を刻む活躍を見せ、二刀流の注目は高まっている。「比較されるレベルの選手ではない」と自覚していても、阪口の耳や目には「大谷2世」の言葉が入ってくる。「投手と野手どちらか1つでも極めるのは難しい。自分は二刀流をできるとは思っていません。プロに行けたら打者で勝負して、ホームランバッターになりたい。打撃は、まだまだできると思っています」。大谷に憧れていても、自分を見失うことも過信することもない。この夏、大谷2世ではなく、阪口樂の名を響かせる。

(間淳 / Jun Aida)

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