旭川実のプロ注目148キロ右腕・田中が目指す“幼馴染対決” 大阪桐蔭左腕は「目標」

大阪桐蔭・松浦とは旭川の新富野球少年団で一緒にプレー【写真:石川加奈子】
大阪桐蔭・松浦とは旭川の新富野球少年団で一緒にプレー【写真:石川加奈子】

大阪桐蔭・松浦とは旭川の新富野球少年団で一緒にプレー

 常に田中の投球が勝敗の鍵を握ってきた。ワンマンチームともなれば、不協和音が出てきてもおかしくないが、そんな空気は一切ない。1年夏からバッテリーを組む北口祥夢(しょうま)捕手(3年)は言う。「楓基がテングになったりしたら、バラバラになっていたと思います。でも、あいつは1年生の時から謙虚。チームをまとめたり、常にチームのことを考えてくれる。だから好きです」。

 岡本大輔監督も、田中の人間性を高く評価する。「野球に対してストイックで、レベルの高い話ができます。大人の考えができる一方、みんなとバカを言い合う高校生らしさもあって、人間性が素晴らしい。それだけに良い思いをさせてあげたいですね」と語る。

 副キャプテンを務める田中は、仲間思いだ。今夏の旭川支部予選では、0-0で迎えた終盤の好機に打席に向かう際、力をもらいたいと河原康太郎主将(3年)から借りたバットで決勝打を放った。「3年生のことが好き。本当にいつも楽しいので、少しでも長く一緒に野球をやりたいです。みんなの力を借りて、勝ってやろう! という気持ち」と田中は照れくさそうに笑う。

 勝ち続ければ“幼なじみ対決”が実現するかもしれない。大阪桐蔭の150キロ左腕・松浦慶斗投手(3年)は父親同士が職場の同僚で、宮城県石巻市の社宅は隣だった。田中が小学1年の時に旭川に引っ越して離れ離れになったが、2011年の東日本大震災の後に松浦家も旭川に引っ越し。新富野球少年団で一緒にプレーすることになった。中学、高校と別のチームながら「小学生の時から常に上にいて、目標の存在」と意識してきた。甲子園で対戦すれば、新たなドラマが生まれるはずだ。

 好きな言葉は「夢は正夢」。スポーツ店に飾ってあった日本ハム・栗山英樹監督のサインに添えられた言葉に惹かれ、グラブの一つに刺繍を入れている。「目指すは甲子園出場。その夢が正夢になれば」と最後の夏に集大成を見せる。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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