新型コロナに翻弄された中学球界 制限逆手に“考える力”育成、各地域の実情は?

新型コロナウイルスがポニーリーグにも影響(写真はイメージ)
新型コロナウイルスがポニーリーグにも影響(写真はイメージ)

都市部で集まって練習できないケースが続出、成長のカギはチーム方針の浸透

 昨年から猛威を振るっている新型コロナウイルスからは、中学球界も逃れられない。7月22日から関東地方で行われたポニーリーグ(中学硬式野球)の第47回全日本選手権に集まったチームも、それぞれ活動が難しい時期を経て、勝ち抜いてきた。そもそもこの大会も、昨年は九州・沖縄のチームが参加できない状況下で行われており、全国大会と言える規模は2年ぶりだ。

 特に都市部のチームは、断続的に続いた緊急事態宣言の影響をもろに受けた。東京都西部を活動拠点とする小平ポニーズの場合、公共自治体の所有するグラウンド、また高校のグラウンドへの立ち入りが難しくなり、その間は近隣の公園で数人ずつ、入れ替え制の練習を強いられた。とはいえ、公園はボールの使用を規制しているところが大半。できたことといえば、十分に間隔を取っての素振りや投手のシャドーピッチング、ボールを使えたとしても近距離から緩くボールを転がしてのゴロ捕球が精一杯だった。

 九州の福岡県筑後市を拠点とする筑後リバーズの場合、今春は1か月ほど全く練習できない時期があった。選手はそれぞれメニューを考え、山での走り込みや器具を使っての弱点強化を行った。ただ活動を再開できるとなったとき、気になったのは選手の“緩み”だったという。入部英徳監督は「皿を洗おう、自分で掃除をしよう、おじいちゃんおばあちゃんの分まで靴をきちんと並べよう」という話から再スタート。決まりを守る、というところから規律を取り戻させ、野球につなげていった。

 名古屋市に近い愛知県稲沢市を拠点とする愛知稲沢ポニーの場合も状況は厳しかった。企業が所有するグラウンドは使用不可となり「去年の2~6月は本当に何もしていませんし、今年も4~5月には1か月ほど何もできない時期があった」と佐治靖生監督。チームの屋内練習場があり、バットを振ることはできたが、大会前になっても「子どもたちを信じて、やるしかない」という状況に置かれた。

 神奈川県平塚市で活動する湘南クラブのケースは、もともと練習を行うのは土日だけ。グラウンドが使えない日が出ても、選手が仲間と過ごす貴重な機会を無駄にはできなかった。ここで生きたのは、海が近いという“地の利”。大磯の海岸で走り、下半身強化に努めた。砂浜でのスイングも強化につながった。

 各チームの3年生は中学生活最後の夏に向け、技術も心も様々な部分を強化したい時期だったはず。大半のチームは選手に具体的なメニューを指示することはせず、自主性に任せた。なぜそうできたかといえば、日ごろからチームとしての考え方が選手に浸透していたからだ。愛知稲沢は続けて説いてきた「力強く振る」方針を選手が自主トレ中も実践、小平の場合は日ごろから個人成績をデータ化して共有していたため、選手が自身に足りないところを考えて練習していたという。

 中学野球を高校野球やその先へのステップと考え、選手自身に“考える力”を養わせようとするチームが増えている。そんな変化を経たチームのほうが、コロナ禍という異常事態には対応しやすかったようだ。大ピンチを経て、指導法の変化に拍車がかかるのかもしれない。

(Full-Count編集部)

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