吉井コーチに説かれた“良い投手”の条件 ロッテドラ4右腕が2軍降格へて得た自信
チーム事情もあり、将来的に挑戦したいと思っていた先発に挑戦
同時に「将来的には挑戦したい」という気持ちのあった先発での調整も始めた。1軍の先発ローテーションからは石川歩投手が右肩のクリーニング手術で離脱、美馬学投手も2試合連続で10失点という乱調で2軍落ちし、チーム事情が河村には“追い風”となった。2軍での先発3試合で計14回を投げわずか2失点。防御率1.29と適性を証明すると、1軍でのチャンスもすぐに回ってきた。
七夕の7月7日に初先発、相手はプロ初登板と同じソフトバンクだった。初めて本拠地ZOZOマリンのまっさらなマウンドに足を踏み入れると、自然と緊張感が走った。「リリーフとはマウンドからの見え方も違いましたし、全く違う感覚でした」と口にはしても、表情には出さない。いつも通りのポーカーフェイスで、192センチの長身から長い腕を淡々と振った。2軍で意識して取り組んできた直球の“質”にも手応えがあり「粘り強く投げられたと思います」。5回を投げ被安打2本、1失点という好投でプロ初勝利を挙げた。
「開幕1軍でいけたのは良かったですけど、思った通りにはいかなかった。1軍のバッターに数を投げることができましたし、(先発とリリーフ)両方できたのは凄くいい経験でした。1勝できたのがスタートだと思います」
37勝34敗の3位で東京五輪の中断に入ったロッテは、先発投手の不調に苦しんできた。先発に限った防御率は4.41でパ・リーグワーストだ。首位のオリックスとはまだ2.5ゲーム差で、再開後も激しい優勝争いが予想される。1974年以来となるパ・リーグ1位、さらに2010年以来の日本一へ、先発適性を示した長身右腕がまだまだ伸びしろを見せる。
○河村説人(かわむら・ときと)1997年6月18日、北海道勇払郡むかわ町出身。23歳。小学3年時に野球を始め、白樺学園高では3年時に夏の甲子園に出場。初戦で下関商に敗れた。その後は亜大に進学するも1年夏に中退。翌年星槎道都大に入学し、4年秋にはリーグ優勝に貢献し、最高殊勲選手賞を受賞。2020年のドラフト会議でロッテから4位指名を受け入団。192センチ、87キロ。右投げ右打ち。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)