五輪辞退、苦渋の決断を下した台湾が2か月ぶりリーグ再開 有観客での開催目指す

リーグ休止の影響と今後の計画

 リーグ休止期間、各チームは、感染防止に気を配りながら紅白戦を行うなどして調整を行ってきたため、選手たちは再開後もすぐに高いパフォーマンスを発揮している。

 しかし、2か月にも及ぶ休止の影響が全くなかったわけではない。6勝、防御率1.07と、統一のローテーションの軸として活躍していた右腕、テディ・スタンキウィッツと、リーグ奪三振2位、富邦の左腕、マニー・バニュエロスがメキシコ代表として東京五輪に出場するため、急遽チームを退団、いずれも五輪閉幕後も台湾に戻らないことが判明したほか、富邦は4勝をあげていたニカラグア人右腕、J.C.ラミレスも退団、メキシカンリーグへ移籍した。

 これらの外国人選手の退団についてはさまざまな理由が囁かれているが、2か月間休止したことで、シーズン閉幕が12月に突入する可能性も高く、来季に向けた調整が難しくなること。また、オフの期間、ゆっくり家族と過ごせなくなることが原因、という指摘もある。

 このほか、シーズン長期化が余儀なくされるなか、公式戦の日程調整や選手の負担を考慮し、オールスターゲームは2年連続で中止となった。

 さらに、ようやく無観客での再開にこぎつけたものの、各球団にとっては入場料収入を得られないなかでの試合開催となっており、経営面への影響は計り知れない。こうしたなか、CPBLでは収容人数の25%を上限に、観客の入場を可能とする第2弾の防疫計画を提出した。

 読者の皆さんのなかには、台湾の一連の対応は慎重過ぎる、と思われる方もいるかもしれない。台湾においても、さまざまな産業が新型コロナウイルスの打撃を受け、零細自営業者や低所得者を中心に人々の生活にも影響を与えている。政府は各種の救済支援策を打ち出しているが、それでもさまざまな意見は出ている。ただ、台湾においては、「防疫最優先」という政府のスタンスに対し、国民のコンセンサスが得られているように感じる。こうしたなか、CPBLや各球団も、台湾社会の一員として、中央感染症指揮センターの防疫対策に呼応し、リーグ、球団を運営しているのだ。

 感染爆発から約2か月、台湾の1日の感染者数は7月17日、ついに1桁の8人まで減り、この1週間ほどは平均20人前後を推移している。依然、感染源が不明なケースがあるうえ、致死率も諸外国に比べやや高く、日米などの支援もあり伸びてきたワクチン接種率も、1回目を終えた人がまだ30%前後、2回目を終えた人はわずか1%あまりと、決して油断はできない。ただ、制御はされつつあるといえる。

 7月23日、中央感染症指揮センターは、27日から「感染状況警戒レベル」を2級に引き下げることを発表、台湾プロ野球でも27日から、スタンドに、ゲームを盛り上げる応援団やチアガールたちが戻ってきた。今回のタイミングではCPBLが希望していた観客入場の解禁はならなかったが、その日も近づいているといえそうだ。

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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