元WBCスコアラーが考える侍J“金獲り”への秘策 「失敗OK、足でかき回して」

侍ジャパン・稲葉篤紀監督【写真:Getty Images】
侍ジャパン・稲葉篤紀監督【写真:Getty Images】

決勝戦は独特の緊張感、先取点を奪い主導権握りたい

 東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」が悲願の金メダル獲得をかけて、7日の決勝・米国戦(午後7時開始・横浜スタジアム)に臨む。2009年WBCで日本代表チーフスコアラーを務め世界一に貢献した野球評論家・三井康浩氏が、もし今もチームにいたら、どんな提言をするのだろうか。ご本人に語っていただいた。

◇ ◇ ◇

 まず、侍ジャパンには足で米国投手陣をかき回してほしいと思います。米国の投手は概してクイックモーションが苦手です。先発のニック・マルティネス投手(ソフトバンク)は、NPBを経験しているだけあってそれほどではありませんが、中継ぎ以降には走者がいても足を高く上げて投げる投手がいます。少々の失敗はOKというつもりで、大きくリードをとり、積極的に盗塁を試みてほしいと思います。

 私が携わった2009年WBCがそうでした。米サンディエゴで行われたキューバとの第2ラウンド初戦。相手先発の最速163キロ左腕アロルディス・チャップマン投手(現ヤンキース)をいかに攻略するかが鍵でした。相手は破格の球速を誇るとはいえ、当時21歳の若者。われわれは足でプレシャーをかけ、精神面を揺さぶる作戦を仕掛けました。

 1回に青木宣親外野手(ヤクルト)が二盗を決め、2回には小笠原道大内野手(当時巨人、現日本ハムヘッド兼打撃コーチ)と内川聖一外野手(当時横浜、現ヤクルト)が立て続けに牽制で刺されましたが、これも想定内。チャップマンに警戒感を抱かせたプラスの方が大きかったと思っています。3回にはチャップマンに連打を浴びせてイニング途中でKOし、この回一挙3点。最終的に6-0の快勝を収めました。

 また、決勝戦というのは独特の緊張感に包まれ、選手はガチガチになるものです。だからこそ、なんとか先取点を取りたい。リードされて中盤を迎えると、焦りが生じるので、早めに主導権を握りたいところです。

 試合終盤に控える伊藤大海投手(日本ハム)、平良海馬投手(西武)、栗林良吏投手(広島)は、いずれも今大会で度胸満点の投球を披露していますが、そうは言ってもまだまだキャリアの浅い若手。決勝ではなるべく楽な状況でマウンドに立たせたいです。野手陣には、守り勝つのではなく打ち勝つつもりで点を取りにいってほしい。特に今大会は、7月28日のドミニカ共和国戦で坂本勇人内野手(巨人)、2日の米国戦で甲斐拓也捕手(ソフトバンク)が放ったサヨナラ打が、いずれも初球打ち。早打ちが功を奏しているので、この傾向に乗っていいと思います。

 総合力では侍ジャパンの方が上回っていると思います。パワーでこそやや劣りますが、日本にはあの手この手で点を取っていく知恵がある。大願成就を祈ります。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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