無安打無得点から逆襲なるか 帯広農ナインが面食らった157キロ右腕の“意外な姿”

帯広農戦に先発したノースアジア大明桜・風間球打【写真:共同通信社】
帯広農戦に先発したノースアジア大明桜・風間球打【写真:共同通信社】

変化球の多さに戸惑い、4回まで無安打無得点…恵みの雨で逆襲なるか

 第103回全国高校野球選手権は12日、阪神甲子園球場で明桜(秋田)と帯広農(北北海道)の1回戦が行われたものの、5回に入るところで降雨が激しくなりノーゲームが宣告された。明桜の最速157キロ男、風間球打投手(3年)に、4回まで無安打無得点に封じられた帯広農は、13日に予定される再戦に巻き返しをかける。

 選手権史上19度目の雨天ノーゲームは、劣勢となっていた帯広農にとって天恵となるか。前田康晴監督は「厳しいゲームになっていますので、仕切り直しになるのはいいこと」と前を向いた。帯広農ナインは多くが抽選前から“世代で日本一速い男”風間との対戦を望み、いざ対戦が決まってからは対策も積んできた。「150キロのボールを打つのは難しい。間にある130、140キロ台のボールを打っていこう」というものだった。

 ところが、実際に対した風間には歯が立たなかった。初回が3者凡退、2回は2死から四球の走者を出したものの、走塁ミスが出て3人で終了。4回には先頭の西川が死球で出塁したものの盗塁死し、ここまで無安打無得点、毎回3人ずつで終わっていた。

 ここまで苦しんだのは風間の高い能力の他に、帯広農ナインが“意外な姿”に驚いたためでもある。試合開始前から雨が降り続き、グラウンドは緩くなっていた。風間はそれを頭に入れ、投球を変化球中心に組み立てた。途中からは振りかぶるのを止め、雨で滑ってもきちんと投げられるようフォームの安定を重視した。最速は149キロ。それよりもスライダー、カットボール、フォークと多彩な変化球を駆使する姿が印象的だった。

 帯広農ナインの頭に、変化球投手・風間の姿はなかった。「4番・遊撃」で先発した佐伯柊主将は、2回の初対戦でスライダーを打ち損じ投ゴロ。「思っていたより変化球を多く使っていた。外への変化球がギリギリのところに来たりして、なかなか手を出せなかった。自分たちが対応できていなかったので改善して臨みたい」と明確に改善点を口にする。

 前田監督も「速球も、ここぞというときに指にかかったボールを投げてくる。クレバーな投手だなと思いました。打ち崩すのは大変だなという印象です」と、ただ剛速球を投げ込むだけではない、風間の真の力に警戒を強めた。

 帯広農は21世紀枠で昨春の選抜代表校となり、夏に行われた交流大会では高崎健康福祉大高崎を4-1で破っている。今夏北北海道大会では、地区予選からのチーム打率は.425という強打を看板に戦ってきた。「もっともっとチャレンジャー精神で、もっともっとぶつかっていかないと勝利はない」と前田監督は言った。部員は地元農家の跡取りばかり。地に足をつけた文字通りの“泥臭さ”で、仕切り直しに向かう。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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