東京五輪決勝で侍J相手に好投 鷹マルティネス、来日4年目で大きく変わった点を探る
球速がアップしたツーシーム、チェンジアップととも効果的な球種に
最後に球種別の被打率についても見ていきたい。2018年は最速で150キロ台に達するストレート、140キロ台半ばのカットボールとツーシームを活かして、ゴロを打たせる投球を展開していた。チェンジアップ(.206)、カーブ(.169)という球速の遅い2球種の被打率は低く、速球系の3球種の被打率は高くなっていた(直球.370、カットとツーシームは.275)ところにも、打たせて取る球と、空振りを狙う球の違いが表れているといえよう。
不振だった2020年はツーシームの代わりにスライダーを用いていたが、ストレート、カットボール、カーブの3球種が被打率.300を超えるなど苦戦した。だが、2021年は再びレパートリーに加えたツーシームの球速が向上し、150キロを超えることも珍しくなくなった。3シーズン全てで被打率が低かったチェンジアップもさらに進化し、低めに制球して三振を奪えるように。この2球種の被打率がとりわけ低くなっている(ツーシーム.130、チェンジアップ.111)のも、その威力と精度の表れといえよう。
また、カットボール、速球、ツーシームとの間に球速差が生まれたことにより、チェンジアップよりもやや速いカーブも含めた、4つの球速帯で勝負ができるように。2018年には同じような速度から逆方向に曲がるカットボールとツーシームを活かしていたが、また違ったかたちで的を絞りづらい投球スタイルを構築している。
打たせて取る投球から多くの三振を奪うスタイルへの転換が奏功し、安定感が大きく向上。それに加えて、持ち味だった制球力の復活や、被本塁打の減少といった要素も、現在の好投へとつながっている。
故障前の自分の幻影を過度に追い求めることなく、投手としての完成度をさらに高めた姿勢と、故障と不振を乗り越えてカムバックを果たした不屈の闘志は、見事の一言に尽きるだろう。今後もどんな投球を見せてくれるか。注目してみてはいかがだろうか。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)