首位奪取目前の巨人 後半戦開幕にあった原監督の狙いと期待に応えた選手たち

右越え同点弾を放った巨人・若林晃弘【写真:中戸川知世】
右越え同点弾を放った巨人・若林晃弘【写真:中戸川知世】

8回の攻防。坂本は後輩に拍手を送った。

 すべては結果論かもしれない。だが、確かに雰囲気が変わる瞬間はあった。8回表、巨人3番手として、高梨がマウンドへ。先頭の京田のゴロの打球を左手中指骨折から復帰した二塁手・吉川が好捕。判定は一塁セーフとなったが、リクエストでアウトになった。その好捕をそばで見ていた坂本はアウトを確信し、吉川へ拍手を送っていた。

 高梨は2死まで取ったが、大島へ遊撃内野安打を許した。続く打者は前の打席で本塁打を放っているビシエドだ。ここで原監督はベンチを出て、今季未勝利の桜井をマウンドへ送った。今季、思うような結果を残せていなかった右腕へ、大きな場面を託したのだ。ここも勝負の分岐点だった。

 桜井は前半戦とは違うフォームになっていた。闘志を剥き出す風貌は変わらないが、左手やリリースの腕の使い方に変化があった。強気の直球攻めで内角をえぐり、最後は147キロの直球でビシエドを三ゴロに仕留めた。勢いをつけさせる吉川の守備、高梨の粘り、桜井の気迫があった。

 そして8回。原監督の代打策がはまる。桜井の代打・若林が中日の又吉から値千金の右越え同点弾。「割り切って初球から思い切っていこうと。完璧な手応えで気持ち良かったです」と若林はたった一球で仕留めた。その後も坂本、丸の連続四球から、4番・岡本和、途中出場の大城がたたみかけて2点を追加。最後は守護神のビエイラが締めた。桜井は今季初勝利を救援で手にした。2年前、主に先発で8勝を挙げ、優勝に貢献したが、あの年も救援勝利から階段を上がっていった。ひとつのきっかけになるかもしれない。

 東京五輪の疲れを見せずに坂本は通算169度目の猛打賞。プロ野球では広瀬(南海)に並び9位タイの記録となった。4打席目は四球も最後は勝ち越しのホームを踏む活躍だ。「チームが勝てたことが何よりも良かったです。その中で、いい仕事ができてよかったです」と語った。その言葉に尽きる。

 阪神が敗れ、首位とは1ゲーム差。怪我人続きで苦しい戦いの今季だが、指揮官の意図する野球に、選手も応じる。今は選手たちが流れを読み、首脳陣の想像を超える野球を体現しているようにも見えた。まだ後半戦が始まって1試合だが、阪神とのゲーム差をここまで縮めてきたのには、確かな強さがあり、選手たちからは自信が感じとれた。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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