明徳義塾・馬淵監督も「ボールが生きてる」 劇勝呼んだ“左横手トルネード”の存在

2番手で登板した明徳義塾・吉村優聖歩(ゆうせふ)【写真:共同通信社】
2番手で登板した明徳義塾・吉村優聖歩(ゆうせふ)【写真:共同通信社】

県岐阜商・鍛治舎監督との“名将対決”を制した策とは?

 第103回全国高校野球選手権は15日、阪神甲子園球場で順延されていた第3日を行った。第2試合では明徳義塾(高知)が県岐阜商(岐阜)を9回サヨナラの3-2で下し、2回戦にコマを進めた。明徳義塾の馬淵史郎監督はこの白星が甲子園通算52勝目で、単独4位に浮上。記念の勝利を呼び込んだのは、2番手で投入した“超変則”吉村優聖歩(ゆうせふ、2年)投手の快投だった。

 明徳義塾・代木大和(3年)と県岐阜商・野崎慎裕(3年)の両左腕が先発した試合は序盤、静かに進んだ。動いたのは6回、県岐阜商は無死一塁から「3番・右翼」で先発した松野匠馬(3年)が中越えに適時三塁打し先制。さらに打線が中軸に向かう場面で、明徳義塾は代木から吉村優聖歩投手(2年)への交代を選択した。

 馬淵監督は「相手は軟投派に弱いかなと思ったので、迷わず変えました。2点目を取られたら厳しいかなと思ったので」と、県岐阜商を徹底分析した結果の策だった。さらにエースの代木を試合前のブルペンで見た時に、抜け球が多いのが気になっていたという。吉村は1回から準備を続け「すぐ行く準備はできていました。いつ行くのかなと思っていた」と待ちに待った甲子園デビューを果たした。

 策は当たった。吉村は県岐阜商の「4番・捕手」でプロも注目する高木翔斗(3年)を遊ゴロ、続く中西流空外野手(3年)も遊ゴロ、行方丈内野手(3年)を三振に仕留めピンチをしのいだ。「うちはラッキー、ラッキーで行けた。あそこが勝負のアヤだったかな。吉村はシンカー系のボールも得意で、遊ゴロに打ち取るときは調子がいいんですよ」と指揮官も高笑い。その裏打線がクリーンアップの長打攻勢と犠飛で2点を奪い、逆転した。

 吉村は、一旦打者に背中を向けてから、左横手で腕を振るという超・個性派だ。今春の選抜から戻るとこのフォームに改造し、すんなり自分のものにした。上から投げている時はどうしてもインステップを改善できず「股関節が柔らかいんですよ。だったらそのままにしたらどうか」という指揮官のアイデアでこのトルネード投法に挑んだ。わずか2週間ほどで実戦登板にまでたどり着き、今夏の高知県大会では2試合、11回1/3を投げ失点はわずかに1。エースの代木に並ぶ存在にまでのし上がった。

「ベース上のボールが生きているんですよ。対角線のストレートがいい。スピードがあと5キロも出れば、相当打ちづらいですよこれは」

 馬淵監督の吉村評だ。県岐阜商の鍛治舎巧監督との初対戦が“名将対決”と呼ばれたことについて「僕は名将じゃない。敢えて言えば『迷う方』ですよ」と笑い飛ばした指揮官。実際には、まだまだいくつもの策を隠し持っていそうだ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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