投球数の「制限」でなく「限度」 ポニーが込める想いと全日本選手権で見えた“効果”

日本ポニーベースボール協会・広澤克実理事長(右)【写真:小林靖】
日本ポニーベースボール協会・広澤克実理事長(右)【写真:小林靖】

「制限」ではなく「限度」を選んだ背景、野球というスポーツの本質は…

 7月22日から4日間の日程で開催されたポニーリーグの全日本選手権。ポニーブロンコ大会、理事長杯大会、ポニー大会の3部門が同時開催され、メイン会場となった東京・江戸川区球場などを舞台に合計69試合が行われた(交流試合は除く)。試合は本来のフォーマットより2イニング少ない7イニング制で行われたが、1人の投手が1試合を完投するケースはほぼゼロで、いずれの試合も2人以上の投手がボールを繋いだ。

 2020年から独自の投球数限度を設けるポニーリーグでは、1試合あたり中学3年生は85球、2年生は75球、1年生は60球と規定。当日の連投や投手と捕手の兼任を禁止するほか、3連投なども禁止している。試合中には大会役員が投球数をしっかりチェックし、1日の限度に近づいたら放送で知らせるなど、スムーズな進行で実施されていた。

 一般に投球制限は、「制限」という言葉の性質からか「投げたいのに投げさせてもらえない」「投げられるのに投げさせてもらえない」「投げさせたいけど許されない」といったネガティブな印象がついて回る。だが、本来は子どもたちを故障から守ったり、多くの選手に投手としての経験を積ませたりするポジティブで前向きな目的から生まれたもの。エース1人に頼り切りになるのではなく、本来のチームスポーツとしての本質を浸透させるためにも、ポニーリーグでは「制限」ではなく「限度」という言葉を使っているという。

 大会でマウンドに上がった子どもたちは異口同音に「みんなで1試合を投げ切れて良かった」「いつも通り協力して投げられた」「次の投手を信じて思いきり投げられた」と話し、仲間と協力して戦ったことを誇っていた。2019年12月に「SUPER PONY ACTION パート1」が発表された際、同時に投球数限度をポジティブに捉えるために、下記の4つの考え方を提示。それが子どもたちにも浸透している表れとも言える。

○限られた球数の中で1人でも多くの打者をアウトにする投手がPONYスーパーピッチャー
○仲間を信じてマウンドを譲れる心を持つ選手がPONYスーパーピッチャー
○無限の可能性を秘めたポニーリーガーに、先発・中継ぎ・抑えなどの役割を経験させ、投手としての才能を積極的に見出すのがPONYスーパーリーダー
○全員が一丸となって戦うチーム・選手がスーパーPONYリーガー

 全日本選手権の期間中は江戸川区球場にとどまらず、会場となった各球場を精力的に視察した元ヤクルト、阪神、巨人の広澤克実理事長も効果を実感する1人だ。

「投球数限度を設けると、投手の体力がつかないとか、短いイニングしか投げられない子が増えるとか、そんな声が聞こえてきます。でも、13~15歳の中学生期に必要なのは投げる体力をつけること以上に、故障せずに次のステージへ送り出してあげること。体力は大人になればつきますから。2番手、3番手、4番手の投手がマウンドに上がるので乱打戦になりやすいとも言われますが、それも含めて多くの選手が投手としての経験を積み、チームで戦う大切さを経験することができる。健康で思いきり野球ができるという環境作り。子どもたちの将来を考えたら、そちらの方が大事だと思います」

広澤理事長、変化を恐れる指導者も「いつか気付いてくれると思う」

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