女子高校野球の未来占う「史上初の甲子園開催」 舞台に立つ監督の“複雑な思い”

女子野球に携わり「甲子園は1度捨てました」

 思い出すのは3年夏。阪神などで活躍した藤川球児氏を擁する高知商と対戦した。「9番・捕手」で出場したが、2打数無安打。チームも1-6で敗れ、夢は叶わなかった。大学卒業後は教員になり、高知中央の男子硬式野球部の顧問に。今度は指導者として甲子園を目指してきた中、考えが大きく変える出来事があった。それが女子野球だった。

「女子選手らはただ野球を楽しんで、上手くなろうとしていることに気づき、『甲子園だけが全てではないんだ』と感じました。その時に1度、甲子園というものは捨てましたから」。2016年には、高知・室戸高の女子野球部監督に就任。男子のような夢の舞台はなくとも、厳しい練習についてくる選手たち。上手くなる、試合に勝つ。そのことだけを求めて、指導を続けてきた。

 2019年に高知中央に再び戻って創部した女子野球部は、3年目を迎えた。自ら全国を飛び回って部員集め。11人からスタートしたチームも、今では33人まで増えた。ただ、絶対的なエースがいるわけでもなく、優勝候補と呼ばれていたわけでもない。春に行われた全国高校女子硬式野球選抜大会では、初戦で埼玉栄に8回タイブレークの末1-3で敗退していた。

「だから、いざ突然言われても、戸惑いはあります。でも、今思うとそれが良かったのかな。選手らは違うかもしれないけど、僕は無欲だったから」と、丹波市で行われていた準決勝までを振り返った。春の選抜で優勝した開志学園(新潟)、準優勝の履正社(大阪)は、いずれも3回戦で敗退。高知中央は初戦以外全て1点差ゲームを勝ち上がり、優勝まであと1勝に迫った。

相手の神戸弘陵には最速123キロを誇る島野愛友利投手

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