涙を流した選抜から“覚醒” 智弁学園・前川、指揮官と交わした“約束のホームラン”

6回に2ランを放った智弁学園・前川右京【写真:共同通信社】
6回に2ランを放った智弁学園・前川右京【写真:共同通信社】

小坂監督も称える「2ランが試合を決めたんじゃないかな」

 第103回全国高校野球選手権大会は21日、阪神甲子園球場で行われ智弁学園(奈良)は5-0で横浜(神奈川)を下した。プロ注目の前川右京外野手(3年)は3安打4打点の活躍。甲子園初本塁打となった特大2ランは指揮官との約束を果たす一発だった。

 1年生から主軸として甲子園を経験してきた強打者がついに“覚醒”した。3点リードで迎えた6回。無死一塁で迎えた第3打席でバックスクリーン左に飛び込む特大2ラン。カウント3-0から甘い球を一振りで仕留め「真っすぐを張って、バットのヘッドを走らせて打つことができた」と胸を張った。

 今年の選抜では3試合で計10打数2安打2打点に終わり「全部が通用しない。試合を壊してしまった」と悔し涙を流したが、最後の夏に向け本来の打撃を取り戻している。初戦は内野安打2本に終わったが、この日は待望の長打が飛び出し、得点圏でも勝負強さを発揮。小坂将商監督も「チャンスが上手いこと回って、しっかり打ってくれた。チームとして良かった。2ランが試合を決めたんじゃないかなと思う」とべた褒めだった。

 この試合では春に果たせなかった指揮官との約束も果たした。高校通算31本塁打(当時)として注目を集め、他校から警戒される中でも「バックスクリーンへ打つ」と宣言していたがノーアーチ。それだけに「選抜の時に言ってきて打てなかった。なので打てて嬉しかった。やっと打てた」と試合後は笑みがこぼれた。

 8回無失点のエース西村王雅投手(3年)と共に勝利の立役者となったが「守備でも打撃でもまだ隙がある。無くしていかないとこの先勝てないと思う」と慢心はない。完全復活を果たした前川の夏はまだまだ終わらない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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