「ナックル姫」より凄い…監督絶賛の魔球 女子高校野球初“留学生”が秘めた可能性

「台湾代表になって日本を抑えるくらいに」受け入れた高知中央・西内監督の狙い

 国際試合を見ていても、外国人選手の素質の高さに驚かされる。「ただ投げる、打つ動作は全然上。ただ、練習環境やトレーニングをしていないから、日本が勝っていますけど」。環境が伴えば、脅威になるのでは――。そう思い立ち、出会ったのが黄だった。

「改めて素質は違うなと思いました。独特なんですよ。縦回転が大きいドロップ(カーブ)に、ナックルボールも投げるんですよ。ナックルなんて投げるのを見たことないから、半信半疑だったんですけど、見て驚きました。吉田えり投手よりすごいんじゃないですか」

 かつて話題を呼んだ「ナックル姫」を引き合いに“魔球”の威力に目を見張る。留学してまだ1週間ほどの昨年11月初旬、広島・東広島市で行われた第6回女子硬式西日本大会の折尾愛真高(福岡)戦で先発。「まさか投げないだろうって感じだったので」と黄は驚いたが、5回2失点の好投を演じてみせた。

「将来的には台湾代表になって日本を抑えるくらいの投球を見せて欲しいんですよね」。西内監督はそう期待するからこそ、練習にも熱が入る。異国の地で17歳は懸命に食らいつくが、つい本音も漏れる。「厳しいとは聞いていたけど、思った以上に厳しかった」。親元を離れ、もうすぐ1年。リハビリ中の今は投げることもできないが、テレビに映る母国の大先輩が勇気をくれた。

 黄が中学生の時、隣のグラウンドで練習していたのが当時ラミゴ・モンキーズ(現楽天モンキーズ)に所属していた王柏融外野手(現日本ハム)だった。実は台湾南部の町・屏東の、同じ中学校の出身。「意外と小さかった」と目撃した当時を振り返るが「慣れない環境にも関わらず、活躍していて凄い」とNPBで奮闘する姿に見入る。

 目標は日本の大学、クラブチームで野球を続けること。そして、台湾代表のエースになること。甲子園での決勝の舞台には立つことができなくても、その先には夢が広がっている。「日本語をもっと勉強して、大学に行って、その後は西武ライオンズ・レディースや阪神タイガースWomenなど強いチームで野球をしたい。そして台湾代表に入って日本の選手たちと戦いたいです」。ワールドカップ6連覇中の日本に、台湾のエースが立ちはだかる日が来るかもしれない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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