金メダルに貢献の大砲と中日右腕に高評価…セイバー指標で選んだセ8月の月間MVPは?

中日・柳裕也【写真:荒川祐史】
中日・柳裕也【写真:荒川祐史】

投手陣の頑張りで勝ちを拾った中日…先発の中心、柳に高評価

 投手部門の評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 各チームのRSAA上位3人は以下の通り。

○巨人:畠世周3.09、高梨雄平2.57、戸郷翔征1.11
○阪神:青柳晃洋2.27、岩崎優1.60、岩貞祐太1.56
○中日:柳裕也4.01、福谷浩司3.36、祖父江大輔1.41
○DeNA:京山将弥2.86、伊勢大夢1.47、大貫晋一0.80
○広島:森浦大輔2.20、床田寛樹2.14、栗林良吏1.39
○ヤクルト:マクガフ1.93、今野龍太1.82、大西広樹1.35

 8月の勝利数と防御率で比較すれば、3勝0敗、防御率0.90の大瀬良(広島)や2勝1敗、防御率0.00の秋山(阪神)らが公式の月間MVPの有力候補となるが、セイバーメトリクスの指標で各チームの主な投手(規定投球回数以上登板)を比較すると

○柳裕也:WHIP0.90、FIP1.30、tRA2.03、奪三振率8.57、被OPS.474
○戸郷翔征:WHIP0.70、FIP3.37、tRA3.22、奪三振率8.68、被OPS.499
○大瀬良大地:WHIP0.95、FIP2.83、tRA3.34、奪三振率6.30、被OPS.617
○秋山拓巳:WHIP1.17、FIP3.28、tRA4.36、奪三振率8.00、被OPS.669
○奥川恭伸:WHIP0.66、FIP4.83、tRA4.91、奪三振率7.90、被OPS.612
○今永昇太:WHIP0.86、FIP3.49、tRA3.48、奪三振率9.15、被OPS.609

となる。tRAや被OPSなど包括的な指標での評価により、柳裕也の優位性が見えてくる。中日の今月のチーム投手成績は、WHIP1.01、被打率.215、被OPS.593がリーグ1位で、RSAA8.85は2位のヤクルトの1.98を大きく上回る。打撃陣の低迷を補う貢献度の大きさを表している。なお救援防御率1.73は群を抜いたリーグ1位である。柳個人の成績も申し分なく、福谷、大野とともに中日投手陣を牽引してきたということで、セイバーメトリクス目線で選ぶ8月の月間MVPに柳裕也を推挙する。

柳裕也:防御率0.43(リーグ2位)、被OPS.474、QS率100%、奪三振率8.57、被本塁打0

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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