大混戦のパ・リーグ、セイバー目線で8月MVPを選出 投手部門は超ハイレベルな争い

今月も高レベルの山本由伸、さらに上回る数値を叩き出した投手が…

 投手部門の評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

各チームのRSAA上位3人は以下の通り。

○ソフトバンク:石川柊太5.68、スチュワート・ジュニア3.94、マルティネス3.28
○ロッテ:佐々木朗希1.494、中村稔弥1.487、田中靖洋1.36
○西武:平井克典1.74、森脇亮介1.50、ギャレット1.47
○楽天:早川隆久1.87、西口直人1.42、ブセニッツ1.41
○日本ハム:上沢直之5.35、バーヘイゲン2.56、伊藤大海1.97
○オリックス:山本由伸4.61、宮城大弥1.89、平野佳寿1.47

 7月の月間MVPに選んだ山本由伸は今月も異次元の活躍を見せた。ただそれに負けず劣らずの活躍を見せたのが石川柊太(ソフトバンク)と上沢直之(日本ハム)だ。登板数は山本が2試合、石川と上沢は3試合。

○山本由伸:QS2回、HQS2回、2勝0敗、防御率0.50、WHIP0.44、被打率0.117、被OPS0.348、奪三振率9.50、FIP1.56、tRA1.44
○石川柊太:QS3回、HQS2回、1勝0敗、防御率1.74、WHIP0.77、被打率0.132、被OPS0.371、奪三振率10.89、FIP1.52、tRA1.27
○上沢直之:QS3回、HQS2回、2勝0敗、防御率1.74、WHIP0.97、被打率0.221、被OPS0.536、奪三振率9.58、FIP1.08、tRA1.42

 特に、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定するtRAで、2人は山本よりも良い数値を示している。RSAAが上回ったことと、好調ソフトバンクの投手陣を牽引した貢献度を加味して、8月のセイバーメトリクスの指標による月間MVPには、石川柊太を推挙する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。コミュニティサイト「鳥越規央のデータ野球部」を開設。
https://butaiura.fan/community/torigoenorio/

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