大谷翔平活用で注目の小さな精密機械 肘の負担確認だけではない、大きな効果

パルススローを着用するエンゼルス・大谷翔平【写真:小谷真弥】
パルススローを着用するエンゼルス・大谷翔平【写真:小谷真弥】

映像と映像を重ねて違いを確認、フォーム固定を後押し

 大谷翔平投手の二刀流完全復活で注目されている重さ約7グラムにも満たない精密機器「パルススロー」(以下、パルス)。肘の状態を「見える化」することで、けがの予防とパフォーマンスアップにつなげている。さらに、パルスには技術を高めるもう1つの特徴がある。投球フォームの再現性だ。【間 淳】

 スポーツ選手は競技を問わず理想を描き、そこに近づこうと努力している。理想を実現させるために重要な要素となるのが、最大限のパフォーマンスを引き出す動きや形。野球の投手でいえば、投球フォームにあたる。

 エンゼルスの大谷翔平投手が練習中、右肘に巻いている黒いバンド。このバンドには肘の疲労度を測るセンサー「パルス」が入っている。日々蓄積される疲れを数値化し、その日に最適な投球トレーニングの量と質を算出。けがの予防と、パフォーマンス向上をサポートしている。

 実はパルスには他にも、投手が求めている特徴がある。それは「投球フォームの再現性」。パルスを販売しているオンサイドワールドのゼネラルマネジャー八木一成さんは「特に野球を始めたばかりの子どもたちは再現性のある投げ方にしていこうと。その子にとって一番負荷のかからない投球フォームを探って、同じフォームで投げる練習ができる」と話す。

 パルスでは1球ごとに腕を振る速度やリリースの角度を計測できる。リリースの角度はサイドスローなら0度、スリークウォーターは45度、オーバースローは90度に近くなる。そして、高い再現性を可能にしているのが、映像を重ね合わせられる点にある。作業は簡単。ボールを投げているところをスマートフォンで撮影するだけ。撮影された動画は自動でパルスのアプリに取り込まれる。1球目と2球目の動画を重ねて、構えたグラブの位置や足を上げる高さなど体の動きを1つ1つスローでチェックできる。スマホで投球フォームの解析ができるのだ。

 例えば、2球とも肘にかかる負荷が同じ数値で、1球目の方が2球目より蹴り足が高く上がっていた投手がいるとする。蹴り足が高い時はボールに体重が乗って球速が出ている。そのため、3球目以降の投球では、パフォーマンスの高い1球目のフォームの再現を目指して練習できる。八木さんは「数値と動画、ビフォーアフターを比較しながら、負荷の大きさを見てベストな投げ方を固められる。データがないと、負担が小さい投げ方や、パフォーマンスが高い投げ方が分からない。監督やコーチも選手の一番いいポイントを見つけやすいので、指導のポイントが分かる」と説明する。

 投球フォームの再現性は、好投手の共通点に挙げられることもある。最も高いパフォーマンスを発揮するフォームを把握し、同じフォームを繰り返すことができれば、打者を封じる可能性は高くなる。けがの予防で知られているパルスは、投手の理想をかなえる別の特徴も備えている。

(間淳 / Jun Aida)

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