「最後まで投げるのが醍醐味」西武今井が2年ぶりの完封で示した先発投手の誇り
「『おまえに任せた』と言ってもらえる投手になりたい」
味方打線の援護を受け7-0の大量リードで迎えた6回には、先頭の若月、紅林に連続四球を与え“悪い癖”が顔をのぞかせた。続く福田にも一、二塁間へ痛烈なゴロを打たれたが、二塁手・外崎がスライディングキャッチで阻み併殺。続く代打・宜保を154キロ速球で見逃し三振に仕留め、無失点で切り抜けると、クールな今井には珍しく右拳を握りしめ歓喜の雄たけびを上げた。
6回までは3四球を与えながらノーヒットノーラン。7回先頭の杉本に中前打され大記録は消えたが、自己最多の142球で最後まで投げ切ったのだった。
「9回完投する投手はだんだん減ってますが、最初から最後まで投げるのが先発投手の醍醐味だと思うので、うれしいです」とスターターとしての誇りを示す。通算2度目の完封の他に、完投を2度記録しているが、1度は5回表終了降雨コールドゲーム。1度は今年8月21日のオリックス戦(京セラドーム)で、8回2失点に抑えながら完投負けを喫したもの。正真正銘9イニングを投げ切るのは、プロ5年目で今回が2度目だ。「ピンチの時、中継ぎ投手と比較して、『おまえに任せた』と言ってもらえる投手になりたい」と改めて抱負を語った。
栃木・作新学院高3年の夏に甲子園で優勝投手となり、ドラフト1位で入団。潜在能力の高さは球界関係者の誰もが認めるところで、「ダルビッシュ級」と評する声まである。制球難が大成を阻んできたが、今度こそ本格的な覚醒につなげたいところだ。
チームで今季初の完封投手となり、辻発彦監督は「(高橋)光成や松本(航)も感じるものがあるだろう。この完封は先発陣全体に大きな意味をなすと思うし、なしてほしいよ」と祈るように言った。現在5位の西武だが、今井が持てる素質を開花させれば、残りのシーズンはもちろん、来季以降へも光明が差す。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)