夏登板ゼロも…ドラフト指名の可能性 八王子の“和製ランディ・ジョンソン”の魅力

左肘の骨髄浮腫で夏大会は未登板、大学進学を考えたが…

 鍛えた下半身に腕がついてこなかった。左肘の骨髄浮腫。疲労骨折の一歩手前の状態で、冬場は投げられない日々が続いた。「やっぱり苦しかったですね」と当時を振り返る。

 年明けから徐々にスローイングを再開させ、春季東京大会では初戦の小平西戦にリリーフ登板した。安藤監督に「スライダー封印で7割の力で」と厳命される中、自己最速の146キロをマークするなど3者三振の圧倒的な投球。さらに3回戦の専大付戦では149キロを計測した。その後は100%の力で100球以上投球できるまで回復したが、西東京大会を目前に控えた6月下旬、またしても左肘痛が羽田を襲った。

「マジか……って思いましたね」。最後の夏に登板できず、高卒でのプロ入りは諦め、大学進学を一度は決意した。だが、チームメートや安藤監督の言葉に考えを変えた。「みんなが『絶対(プロ野球志望届を)出した方がいい』と言ってくれたので。それに、監督さんは『出すものだと思っていた』と、進学のことは頭になかったようです」と笑う。これらの言葉が後押しになり、1%の可能性があるならとプロへの挑戦を決めた。

 現在は左肘の痛みはない。ブルペン投球はしていないが、既にスローイングは再開している。肘に負担が掛からないよう、ヤンキースのアロルディス・チャップマン投手、メッツのジェイコブ・デグロム投手らメジャーの剛腕の上半身の使い方を参考にし、体全体を使う投げ方に取り組んでいる。「プロに入れたら、まずは怪我せずに戦えたらなと思います」。“和製ランディ・ジョンソン”に吉報は訪れるだろうか。

◯羽田慎之介(はだ・しんのすけ)
2003年12月25日、埼玉県所沢市生まれ。左投左打。191センチの長身から最速149キロを誇る大型左腕。小学2年時に地元の「荒幡ライオンズ」で野球を始め、6年時にライオンズジュニアに選出。中学では東練馬シニアでプレーした。八王子では2年秋からエースとなり、秋季東京大会でベスト8進出に貢献。名前の由来は巨人・阿部慎之助1軍作戦コーチ。趣味は散歩、絵画。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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