M11点灯のヤクルトはなぜ強いのか? 指標に表れる昨季からの変化と強さの秘密

野手陣は12球団でトップのチーム出塁率.334を記録

 ヤクルト投手陣を見てみると、例えばオリックスの山本由伸投手のような、ずば抜けた成績を残す選手はいない。ここまで2桁勝利を挙げている投手はおらず、2年目の奥川恭伸と小川泰弘の9勝がチーム最多だ。奥川は十分な登板間隔を空けて先発を続け、ここまで16試合に登板。98.1イニングを投げてわずか9四球。54回連続無四球を記録しており、まさに今季のヤクルトを象徴する投球となっている。

 リリーフ陣も44ホールドをマークする清水昇、今野龍太、抑えのマクガフを中心に安定。傑出した存在はいなくとも、総合力に秀でた“投手王国”だと言えるのではないか。

 野手陣はどうか。もちろん主砲の村上宗隆、山田哲人、そしてオスナ、サンタナの両助っ人、成長著しい塩見泰隆と好打者が揃ったことが大きい。チーム打率.256は、広島の.262、DeNAの.258を下回るリーグ3位だが、チーム得点567はリーグトップとなっている。

 この得点力はどこから生まれているのか。チーム打率は.256だが、ヤクルトはチーム出塁率.334は12球団でトップ。チームOPS.735も12球団でトップになっている。それを支えているのは四球数の多さか。434四球はリーグトップ。「BB%」9.4%は、リーグ2位の巨人の8.0%と2%近い差になる。

 2015年ぶりのリーグ優勝に近づくヤクルト。さまざまな強さの要因があるだろうが、ここに挙げたのもその1つだろう。投手は余分な走者を出さずに失点を抑え、打者はできるだけ多くの走者を出してチャンスを作る。その積み重ねが、今の首位という結果に表れている。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY