「お前をドラ1にしてやる」西日本工大・隅田を西武1位に導いた相棒の“引退撤回”
隅田を思う山名の気持ち「知一郎のために秋まで野球を続けました」
2人は秋のリーグ戦が終わるまで共に駆け抜けた。「知一郎のために秋まで野球を続けました」と山名は全力でサポート。隅田は元々好投手だったが、春の全日本大学野球選手権を境に急成長したと山名は感じている。秋は目付きも気持ちの入り方も今までとは違った。三振を取った時のガッツポーズや雄叫びからも、気持ちの強さを感じたという。
「隅田の足を引っ張らないように」と、山名は4年間、少なからずプレッシャーも感じてきた。大学生になったばかりの頃は、キャンパスライフを謳歌する学生たちを見て羨ましくも思った。「今はやる気がない」と武田監督に爆弾発言し、メンバー入りした遠征への参加を“拒否”したこともある。
“野球より遊びたい”時期があった山名もいつしか隅田のボールを受ける“喜び”を感じるようになった。「隅田は本当に凄かった。(プレッシャーより)リードしていて楽しいという気持ちの方が大きかった」。1年生の時に「やる気がない」と言い放った青年は結果的に4年秋までプレーを続け、隅田は周囲の願いの通りにドラフト1位で指名された。
「隅田の球を受けている方が楽しい」「隅田のお陰で自分も変われた」と笑う山名は、すでに就職が決まっており、社会人になったら草野球を楽しむつもりだ。「隅田は調子が上がらない時期もあったけど、リーグ戦にはしっかり合わせてくる。コントロールは安定しているし、プロでもやっていけると思う」と誇らしそう。4球団競合という今ドラフトで受けた最高評価。隅田がこの日を迎えられた裏には、頼もしい相棒の存在があった。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)