阪神ドラ1森木大智の“人生設計” 球児に弟子入り→1軍ローテ→夢の160キロ

高校3年間で甲子園出場ならずも「甲子園を本拠地にしたらいいやん!」

 直球のスピードアップには、格好の教材がある。森木に野球を始めるきっかけを与えた同郷のスター、元阪神投手の藤川球児氏である。昨季限りで現役を引退後、球団の「スペシャルアシスタント」に就任しており、来春のキャンプを訪れる機会がありそう。山本スカウトは「森木はまだまだ球児の域には達していないが、その素質を持っている。いろいろアドバイスをもらえばいい」と言う。森木は「球をリリースする時の感覚と、どのような練習をすれば藤川さんに近づけるのかを聞いてみたい」と目を輝かせた。

 160キロの先には、「年数を重ねるごとに、日本を代表する選手になっていって、日本のトップになりたい」と大目標を見据えるが、そこもまだゴールではない。

 一方、振り返ってみれば、達成できなかった目標もあった。高校3年間で1度も届かった甲子園出場がそれだろう。1年生の夏と3年生の夏は、いずれも県大会決勝で宿敵の明徳義塾に敗れ、2年生の夏はコロナ禍で甲子園大会自体が消滅した。今年9月にプロ志望届を提出後、山本スカウトと面談した際には、「甲子園に出たかった」と吐露。山本スカウトは「だったら、(阪神に入って)ずっと甲子園でやったらいいやん!」と身を乗り出した。

 高知高の浜口佳久監督も「大智が阪神に入れば、野球部の仲間たちと甲子園がつながることになる。大智があそこで投げている姿を見たいと、私もチームメートたちもずっと思ってきましたから。見られる可能性が出てきた」と目を細める。

 思う存分夢を描けることが若者の特権。森木なら、将来へ突き進むだけでなく、過去にさかのぼって叶えることまでできそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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