牧、栗林、伊藤…投打でルーキーが躍動した10月 セイバー的視点で見るセ月間MVP

阪神・高橋遥人【写真:荒川祐史】
阪神・高橋遥人【写真:荒川祐史】

阪神・高橋が好調投手陣を牽引、ルーキー伊藤は3勝無敗

【投手部門】
 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 各チームのRSAA上位3人は以下の通り。

○ヤクルト:原樹理3.16、マクガフ2.24、高橋奎二1.87
○阪神:高橋遥人6.02、スアレス4.30、岩崎優1.71
○巨人:菅野智之3.23、山口俊2.76、中川皓太2.43
○広島:大瀬良大地4.27、森下暢仁2.30、島内颯太郎1.60
○中日:R・マルティネス1.79、田島慎二1.63、福敬登1.30
○DeNA:東克樹3.38、ピープルズ2.40、三上朋也1.21

 10月の公式の月間MVPの候補としては、阪神・伊藤将司(3勝0敗1ホールド、防御率0.98)、広島・栗林良吏(9試合9セーブ、防御率3.12)のルーキー2人が有力だろう。しかし、セイバーメトリクスによる評価では、ダントツで阪神・高橋遥人である。

○高橋遥人:WHIP0.59、FIP1.36、tRA1.50、奪三振率9.00、K/BB9.67、被打率.144、被OPS.356
○伊藤将司:WHIP0.90、FIP3.46、tRA4.12、奪三振率4.88、K/BB2.50、被打率.190、被OPS.526
○栗林良吏:WHIP1.27、FIP2.94、tRA3.18、奪三振率14.54、K/BB2.33、被打率.161、被OPS.588

 今月の高橋遥人はWHIP0.59とほとんど出塁を許していない。打たれた打球についてもゴロ打球59%と、tRAの数値に良い影響を与える打球が多かったことが示されている。好調だった阪神の投手陣を牽引した高橋遥人をセイバーメトリクス目線で選ぶ10月の月間MVP投手部門に推薦する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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