投手4冠のオリ山本を超える貢献度示した右腕 セイバー指標で選ぶパ10月のMVP
日本ハム・上沢は3試合登板で防御率1.74
【投手部門】
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。
各球団のRSAA上位3人は以下の通り。
○オリックス:山本由伸5.48、ヒギンス2.36、山崎颯一郎2.09
○ロッテ:佐々木朗希2.93、美馬学2.67、益田直也2.32
○楽天:則本昴大2.47、田中将大1.87、早川隆久1.04
○ソフトバンク:マルティネス4.00、千賀滉大2.54、大関友久1.44
○日本ハム:上沢直之6.70、バーヘイゲン3.60、加藤貴之2.63
○西武:與座海人2.83、森脇亮介1.47、武隈祥太0.92
オリックス・山本由伸、ロッテ・石川歩、西武・松本航が月間3勝0敗の成績を残した。その中でも防御率0点台の山本と石川が公式の月間MVP有力候補だろう。山本が受賞すれば4か月連続となる。セイバーメトリクスによる指標での評価でも圧倒的な貢献度を示してきた。ただ、10月は山本を超える貢献度を示した投手が現れた。日本ハム・上沢直之である。
山本由伸:登板4、QS4回、HQS3回、防御率0.84、WHIP0.66、被打率.145、被OPS.362、奪三振率9.00、K/BB6.40
上沢直之:登板3、QS3回、HQS2回、防御率1.74、WHIP0.63、被打率.169、被OPS.397、奪三振率8.27、K/BB19.00
次に2人のFIPとtRAに関わるデータを比較する。
山本由伸:奪三振32、与四死球6、被本塁打1、FIP1.57、ゴロ率61.5%、内野フライ率5.1%、tRA1.83
上沢直之:奪三振19、与四死球3、被本塁打0、FIP1.19、ゴロ率43.6%、内野フライ率21.8%、tRA0.45
ライナー性の打球も上沢にはほとんど観測されなかった。打たれた打球の質を考慮するtRAでは大きな差を示していることがわかる。日本ハム月間12勝の「投」の原動力となった上沢直之を10月のセイバーメトリクスの指標による月間MVPに推薦する。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。