球数制限と真逆の169球完投 日大三島、38年ぶり選抜確実も名将が求めた“優先事項”

「4番・投手」で先発した日大三島・松永陽登【写真:橋本健吾】
「4番・投手」で先発した日大三島・松永陽登【写真:橋本健吾】

「4番・投手」のエース・松永は8安打8四死球5失点、169球の完投

 新生・日大三島(静岡1位)の快進撃は止まらなかった。6日に行われた秋季東海大会準決勝で、大垣日大(岐阜2位)を10-5で破った。「4番・投手」の松永陽登(2年)は8四死球を与えながらも、169球を投げ抜き5失点完投。永田裕治監督は「一本立ちしてほしいとの思いで完投させた」と意図を説明した。

「何回も継投は考えていた。だが、一本立ちしてほしい。その思いだけだった」

 初回に2四球を与え2点を先取されたエース右腕。その後、打線が奮起して8点をリードし、コールド勝ちが見えた7回も3安打2四死球で2失点、8回にも四球が絡みタイムリーを浴び5点目を失った。この試合、松永は1人で投げ抜いたが、8安打8四死球5失点と決して快投とは言えない内容だった。

 今年から春夏の甲子園で初めて「1週間で500球」の球数制限が適用された。複数投手の育成の重要性が高まっているが、指揮官がまず求めたのは“チーム改革”だった。この日放った満塁弾など投打でポテンシャルの高さは認めているものの「大舞台を経験していないし全体的におとなしい性格。意識を変えたかった」と語る。

 これまで報徳学園時代は2002年春に日本一に輝くなど甲子園に通算18度出場。大谷智久(現ロッテ2軍投手コーチ)、片山博視(元楽天)、近田怜王(元ソフトバンク)、田村伊知郎(西武)ら多くのプロ野球選手を輩出し、全国で勝ち抜く難しさも経験してきた。

 1984年以来、38年ぶりの選抜出場を確実のものにしても「まだまだ。まずは明日の試合を全力で戦う」と喜びに浸ることはなかった。名将の目の奥には全国で勝負できる“正真正銘のエース”を育成することが最優先事項。秋の日本一を決める明治神宮大会、そして来春の選抜に向け手綱を緩めることない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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