台湾プロ野球を1試合で戦力外…再びNPB目指す右腕を支える新庄剛志氏の“深すぎる”言葉
多くの物を取り戻した台湾の経験、台湾行きにつながった妻の一押し
昨季は故障の影響もあり、最速156キロのストレートは150キロを超えず、目指すピッチングには程遠い状態だった。だが、縁あって向かった台湾で再調整すると、最大の武器でもあるストレートに球速と球威が回復。足の痛みも癒え、体を基礎から作り直し、万全のコンディショニングに整ったことが大きいが、2軍投手コーチを務めるニック・アディトン氏の存在もある。
「投手コーチに『本当はNPBに戻りたいんじゃないのか?』と聞かれて、『もちろん戻りたいですよ』と本音でいろいろ話をしました。その中で『だったら、そのレベルまで持っていかないといけない。そこを目指してやっていこう』と一緒に練習に付き合ってくれました。最後には『素晴らしいものが出来上がったぞ』と言ってくれたのがうれしかったですね」
2軍でがむしゃらに1軍を目指す若手選手たちに囲まれていたことも、プラスに働いた。
「1軍を目指す選手と一緒に練習できたことはいい経験になりました。彼らはすごく向上心が強くて、何としても1軍に行きたい、野球が上手くなりたいという気持ちが伝わってくる。その中にいると、僕も高校や社会人でやっていた時のような、夢中になって上の舞台を目指す気持ちを思い出しました。改めて、少しでも上手くなって少しでも上のステージにいきたいと、より強く意識してプレーできた半年になりました」
1年前はまさか自分がプレーするとは夢にも思わなかった台湾で、これほど多くのものを取り戻すことになるとは、不思議な縁としか言いようがない。そもそも、台湾行きのきっかけとなったワールドトライアウトに参加したのも、妻に「受ければチャンスが広がるんじゃないの?」と背中を押されたから。あの時、妻の一押しがなければ、消えかかっていた野球に対する情熱すら取り戻すことはなかったかもしれない。
もう1度NPBで、という思いを持ちながら、帰国後は自宅近くの公園で練習を続ける。練習相手はいない。
「球技をしてもいい広場があるので、そこにネットを立てて投げています。たまに妻も一緒に付き合ってくれるんですけど。周りから見たら、そこまでするか、という環境かもしれませんが、やっぱり野球が好きだということを確認できたし、台湾で投げた最後の登板で自分の投げる球が通用するものになってきたという感覚を掴めたので」