わずか1球で先発が降板も… 緊急事態を乗り越えた東京ガスの“信頼継投”

東京ガス・臼井浩【写真:鉾久真大】
東京ガス・臼井浩【写真:鉾久真大】

東京ガスの先発・益田武尚は1球を投げたところで降板した

 球場がざわついた。7日に東京ドームで行われた第92回都市対抗野球大会・準々決勝。ENEOS戦に先発した東京ガスのルーキー・益田武尚投手は、先頭打者に左前打を打たれたところで脇腹を気にする仕草を見せたかと思うと、ベンチに合図を送り自らマウンドを降りた。わずか1球での降板。観客席は騒然としたが、東京ガスベンチは落ち着いていた。

 2番手で登板した三宮舜投手(明治安田生命から補強)が4回に2点先制を許したが、4イニングを3安打2失点と試合を作ると、打線がすぐに逆転。後を受けた3番手・臼井浩投手が5イニングをソロ本塁打1本のみの1安打1失点に抑え、4-3で逃げ切った。

 試合前のブルペンで脇腹に張りを感じたという益田。「1人目を投げた後にこれ以上自分が投げてピンチを作ると流れが悪くなってしまうと早めに判断した。皆さんに迷惑をかけてしまった。申し訳ない」と悔しそうな表情を浮かべた。山口太輔監督は「試合が終わってから聞いたら大丈夫ですと言っていた。もしかすると次も投げられるかもしれない」と軽症を強調した。

 山口監督は「三宮にはなにかあったらいくぞと伝えていた。とはいえよく投げてくれたと思う」と緊急登板で試合を作った左腕を労った。試合展開次第では投手全員をつぎ込む覚悟だったというが、打線が逆転に成功した後は「臼井しかいないと思っていた。それ以降は変える気はなかった」とエースにマウンドを託した。

 予選では先発2試合を含む3試合に登板し、チーム最多の18イニングを投げてきた臼井だが、今大会はここまでリリーフ登板のみ。山口監督は「益田がここまで投げられるようになったことで、臼井を後ろに持っていくことができた」と、若手の台頭によって柔軟な起用が可能になったことを明かす。

「臼井が後ろにいると、どれだけ接戦でも安心感がある」と指揮官が絶大な信頼を寄せる27歳の右腕は「野手が絶対点を取ってくれるという安心感があるので思いっ切って投げられる」と野手陣への信頼を口にした。臼井にとっては初の4強。未知の領域だが「1球1球魂を込めて投げるだけ」と淡々と次戦を見据えた。

(鉾久真大 / Masahiro Muku)

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