大谷翔平の「二刀流成功の鍵」 元メジャー右腕が断言、被打率2割の“新魔球”とは
斎藤隆氏が投手・大谷の進化に注目「球数を少なくイニングを終えるスタイル」
エンゼルスの大谷翔平投手は今季、投手として9勝、打者として46本塁打を放って日本人初の満票MVPに輝いた。Full-Count編集部では、今季の大谷をテレビ解説者として見てきたプロ野球OBにインタビュー。今回は来季からDeNAチーフ投手コーチに就任する斎藤隆氏が、投手・大谷について振り返ってもらった。その名場面を映像とともに紹介する。
前半戦とはまるで”別人”だった。まず斎藤氏が注目したのは、6月30日(日本時間7月1日)の敵地・ヤンキース戦で初回途中7失点KOとなった後からの投球だ。7月6日(同7日)の本拠地・レッドソックス戦からの11登板で6勝1敗、防御率2.82の好成績。先発投手として、初めてシーズンを完走した。「スターターとして、かなりレベルを上げたと思っています。あのヤンキース戦の後から明らかにスタイルを変えました」と表現した。
何が変わったのか。斎藤氏が指摘したのはスライダー、そして今季から本格導入したカットボールだ。
「それまでは三振か本塁打かの勝負を挑み、結果としてゼロに抑えればいいというクローザー的投球で、まるでショーマンのようでした。でも、二刀流でシーズンを乗り切らないといけない。そこでスライダー、カットボールを多く投げて、なるべく球数を少なくイニングを終えるスタイルになりました」
6月は全体の9.1%しかなかったカットボールは、7、8月はそれぞれ18.7、19.8%と大幅アップ。しかも、7月以降の3か月は被打率.200(35打数7安打)と安定感抜群だった。斎藤氏は力説する。
「カットボールはゾーンの中で動かすボールです。(勝負球の)スプリットはストライクからボールにする球。キレキレの時は振ってくれますけど、必ずしも絶好調の時ばかりではないし、振ってくれなければ球数が増えて降板を早めることがある。あのボールが二刀流成功の鍵を握っていたと言っても過言ではないと思っています」
ただ、斎藤氏は投手・大谷はまだまだ上を目指せると指摘する。
「これまで1年まともに投げたことがなかったというのは大きな課題だったと思うんですね。それをクリアできたシーズン。ただ、今スタッツを見返すと、130回1/3ではメジャーの先発投手としては物足りない。170、180イニングはいかないと。二刀流ですから最低ライン150イニング、ゲーム数も今より増やさないと。そこが本人にとっても目標になるんじゃないですかね」
2006年からドジャース、レッドソックスなどで通算7年間プレーした斎藤氏。引退後はパドレスのフロントオフィス入りを果たすなど、メジャー球界に精通しているだけに、その言葉に力が入っていた。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)