佐々木朗希を導いた「勝てる捕手」の存在 ロッテはなぜ加藤匠馬を起用したか?
ドラフト1位で松川を指名、来季以降は競争激化?
そういった事情を考えれば、2016年に打率.256でベストナインを受賞した経験もある田村の復調に期待がかかる。近年は故障に苦しむの、2015年から正捕手を務め、2016年から4年連続で打率.239以上の数字を残してきたこともあり、現状の捕手陣では最も攻守のバランスが取れた存在といえる。今季終盤は加藤の台頭で出場機会を減らしていただけに、来季は正捕手奪還を果たせるかに注目だ。
また、終盤戦に打撃面で存在感を発揮した、佐藤のさらなる成長にも期待がかかる。ただし、好調だった9月は指名打者と代打での出場機会が多く、打撃に集中できる起用法が好結果に繋がった傾向にあるのは否めない。また、佐藤が先発マスクを被った試合では8勝11敗3分で勝率.421と、チームを勝たせることはできなかった点も懸念材料だ。
終盤戦での活躍を通じて打者としての序列は上がったものの、捕手としての序列は後退しつつあるのも確かだ。終盤戦では強肩と俊足を活かせる外野での起用がテストされたこともあり、ソフトバンクの栗原陵矢捕手のように、本格的に打撃を生かす道へと進むのか。それとも、このまま打てる捕手を目指して研鑽を続けるのか。今後の首脳陣の判断にも要注目だ。
そして、来季以降に関して言えば、市立和歌山高からドラフト1位で千葉ロッテに入団する、松川虎生捕手の存在は大きいだろう。捕手としての将来性だけでなく、打撃センスも高く評価されている大器の加入は、未来の正捕手争いにも影響を及ぼす可能性が高い。先述した佐藤の外野起用が、松川の加入が決まったドラフト後に始まったものである点も興味深い。
捕手は経験が必要なポジションでもあり、高卒から早期に台頭する選手は決して多くはない。しかし、西武の森友哉捕手は指名打者や外野手として高卒2年目からレギュラーに定着し、本職の捕手としても5年目に正捕手へ。また、田村も高卒3年目で正捕手の座をつかんでおり、同様に松川が若くして1軍に定着する可能性も十分にありうる。
加藤の活躍と松川の加入によって、来季以降の捕手争いがさらに激化することは、チームにとっても確かなプラスになるはず。そんな中で、移籍を機に台頭を見せた加藤がキャンプからチームに帯同する来季以降に、より多くの出場機会を確保できるかにも注目だ。「令和の怪物」の剛速球を受ける女房役であり続けるためにも、来季以降も巧みなインサイドワークによって、チームを勝たせる活躍を見せてほしいところだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)