「何も感じないのが一番ダメ」 元阪神・桧山進次郎が自信をつかんだ瞬間とは?
外野の“ド素人”が「守備の人」として1軍定着
スポーツ選手はいくつもの転機を重ねて成長していく。プロという大舞台にたどり着いた選手ならなおさらだ。阪神で“代打の神様”として鳴らした桧山進次郎氏は、プロ入り早々大きな壁にぶち当たった。Full-Countの連載「プロフェッショナルの転機」では、そこを乗り越えた戦略にフォーカスする。
東洋大では、東都大学リーグで首位打者もベストナインも獲った。即戦力と自負して飛び込んだプロ野球の世界で、1年目の1軍出場はわずか7試合。17打数3安打で打率.176という寂しい数字が残った。そのオフ、変わらなければという焦りが募った。
「僕の考え方では、『心技体』ではなく『体技心』の順番なんです。健康じゃなければ技術も高まらないし、心も強くならない」
プロとして戦うには、とにかく体力が足りていないと痛感していた。この年の阪神は「亀新フィーバー」に沸いた。最後までヤクルトと優勝を争って2位となり、亀山努、新庄剛志という同年代が二つのポジションを占め、人気者になった。「あと10年このままやったら、もう自分の居場所はない」と思えた。実家のある京都で一番大きなジムを探し、入門。徹底的に体を鍛え上げた。それでも「もう大丈夫」と思えるまでに、3年かかった。
さらに、自信をつけていく助けとなったのが、守備走塁コーチだった故・島野育夫氏だ。大学時代の三塁手から、プロで外野手に転向した桧山氏に、1から外野守備を叩き込んでくれた。気づかされたのは、構えなくていい、という指導だ。「自然体で、歩きながらタイミングを合わせろと」。身を低く“構えて”いると、フライへの反応が遅れるのだ。最初は不安でたまらなかったが、経験を重ねると理解でき、対応もできるようになった。
後の“代打の神様”としての姿からは意外だが、桧山氏は守備要員として1軍の出番を掴んでいった。3年目のオープン戦で、頭を越えるかという打球が来た。目を切って背走し、振り返ると目の前に打球があり、好捕した。「守備は練習すれば本当に上手くなります。出会うコーチと、練習の仕方は本当に大切ですね」と、自信を持てた瞬間を振り返る。
桧山氏の座右の銘は「3K」だ。「感じ、考え、行動する」という意味だ。「無感、何も感じないというのが一番ダメですよね」。自分に何が足りないかを感じ取り、いい指導者に出会ったことで名選手への道が開けた。
○桧山進次郎(ひやま・しんじろう)平安高、東洋大から1991年ドラフト4位指名で阪神入団。1995年に右翼の定位置を掴み、115試合に出場した。2003年、2005年のリーグ優勝には中心打者として貢献。プロでの通算成績は1959試合出場、1263安打、159本塁打、707打点。打率.260。通算代打起用757回、158安打はいずれもプロ野球史上2位。身長177センチ、体重78キロ、右投げ左打ち。
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(Full-Count編集部)